『グレート・バリア・リーフ』のジェームズ・ブリッケル氏が語る、世界最高の自然ドキュメンタリーができるまで
ネイチャー・ドキュメンタリーの最高峰・BBC EARTHが手掛ける『グレート・シリーズ』。本シリーズのうち『グレート・バリア・リーフ』を手掛けたジェームズ・ブリッケル氏が「世界最高の自然ドキュメンタリーができるまで」を教えます!
今、日本でダイオウイカがブームだと話すと「実は僕も、もともとダイオウイカに興味があって、去年受けたインタビューでも“ダイオウイカを撮影してみたい”と話していたんだよ。ダイオウイカは、海の生き物を観察、撮影している人たちにとってはあこがれの存在だからね」とブリッケルプロデューサー。そんな彼こそ、世界中のネイチャー映像作家があこがれるBBCで水中撮影チームのヘッドを務めている人物。そのBBC EARTHで作品を作っているのは一体どんな人々?
「まず、みんな動物がものすごく好き(笑)。動物学を専攻していたり、現場でリサーチに携わっていたり、ダイバーとして活動していたり、という人が多いかな。世界各地から来ていて、それぞれに得意な動物がいるんだ。僕は、爬虫類や魚、それとダイビング関係が得意。入社するために、やはりみんな熱意を持ってアピールするね。僕もBBCの人たちに“うざい!”と思われるまで手紙を書きまくって入ることができたんだ(笑)」
そんな情熱あふれるスタッフが、実際に作品を完成させるまでの道のりとは?
「まずは作品のアイデアを見つけること。僕らは常日ごろから、業界紙に目を通したり世界中のリサーチャーや学者たちと連絡を取ったり、アンテナを張っているんだ。加えて、“世界の市場で今どんなことが求められているか”や“どんなものが作られているか”も重要だね。今、NHKが深海モノを作っているらしいから何か一緒にできないかな、なんて考えることもあるんだ。でも“じゃあウチはワニでいこう”となっても、そこで始められるわけじゃないんだ。市場があるか、科学的に撮影する意義があるかを検討しなくてはいけない。題材が決まったら、ロケーションや、資材の調達なんかはどうするという細かいリサーチに入る。その段取りがついてやっと撮影だ。撮影そのものはとても楽しいけど、それは全体の作業のほんの一部(笑)。撮り終えたら、一番大変なプロセスでもある編集作業が待っている。めどが付いたら音楽やボイスオーバー、ナレーション、サウンドなんかを付け足していく。…簡単でしょ(笑)?」
撮影が終わった時に“あの映像が足りない!”なんてことは…?
「実はしょっちゅうあるよ(笑)。ドキュメンタリーを作るうえで、ある意味最も重要なことが“ストーリーをいかに伝えるか”なんだ。僕も撮影前に細かく絵コンテを描いている。実際の映像をみるとほとんど同じだよ。とはいえ編集段階で “目が動いている映像は!?”“動いているから撮れなかったんだ!”なんて会話をよくしてるよ(笑)」
と言いながらも、多彩な最新機材を駆使し今回も多数の“世界初”映像を撮影。
「実はネイチャー系は市場が小さいのでそのために技術開発する予算を取るのは難しい。そこでどうするかというと、軍事産業やスポーツ関係で使われている技術をリサーチしておいて、それを応用するんだ。ハイスピードカメラはもともと被弾の瞬間を撮影するために開発されたものだし、今回使った空撮用のジャイロスラビライザーという撮影機材は、軍用ヘリで使われていたものだね。これがあると空撮でもぶれずに撮影できるんだ。あと、ヘリに固定して使う空撮用のカメラ・シネフレックスも大活躍したよ。これのおかげで、今回ハンマーヘッドの群れやジュゴンの親子を空から撮影できたんだ。それも短時間で効率よく、ね。同じ対象物を水中で撮ろうすると、そんな時間ではとても撮影できないよ」
あふれる情熱、普段から積み重ねる知識、徹底したリサーチで得る情報、優秀なスタッフと最新機材。そのすべてが最高水準を保つのがBBCの自然番組なのだ。自身が考える“良い”ドキュメンタリーと“悪い”ドキュメンタリーとは?
「悪い番組がどれかなんて言えないけど(笑)、僕が好きではないタイプのネイチャードキュメンタリーは、プレゼンターが出てきて必要以上に脅威をあおったり、上から目線で語ったりする作品。“今まさに恐怖が襲い掛かろうとしています!”なんてタイプのね(笑)。僕は、ありのままを見せる作品を作って、それを通して、皆さんにいろいろなことを感じてもらいたいと思っているんだ」
ありのままのグレートバリアリーフが、ここにある。(本紙・秋吉布由子)
『グレート・バリア・リーフ』
販売元:エイベックス・マーケティング
Blu-ray5980円(税込) DVD4980円(税込)
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