吉川晃司 SAMURAI ROCK 「思いを込めて、全力投球」
「暑い!」。スタジオに到着するなり飛び出したのは、クレイジーなまでの暑さへの怒りだった。「聞いた話だけど、南の海にしかいない魚が駿河湾まで来てるらしい……この暑さはおかしいよ、本当に。それなのに、やることはいっぱいで、パンパン、というよりもパンパカパーンだよっ!」と、苦笑いだ。
音楽、大河で、てんてこ舞い。前回のコラムで伝えたように、8月6日に広島・マツダスタジアムで行われるピースナイターでマウンドに立つ。始球式で投げ、『イマジン』を歌う。
「フォームはずいぶん改善されてきたんだけど、楽に投げるところまでは行ってないなあ。だって、まだ肩が痛い(笑)。本番でボロボロになっていないようにとは思ってるけど、今日も収録が終わったら練習。フォームが良くなった分、球威が落ちてるからさ。……120キロ出したいなあなんて、その前に失敗したりして。それはそれで笑ってもらえればいいか(笑)」
そこまで本気になる必要があるのかとは思うが、やると決めたら本気で臨むのが吉川。音楽活動も、俳優業も、そしてラジオのパーソナリティーも、震災にも原発問題にも政治にも、真摯に向き合う。その姿や生き方に多くの人が刺激を受けたり、元気をもらう。それを裏付けるメールがこの日も届いた。吉川の音楽が42.195キロを走り抜かせたという。
「この話もそうだけど、歌がきっかけで元気になったとか、つらいことを乗り越えられたとか、ファン同志で結婚しましたとか(笑)、そういう話を聞くと、歌ってきて良かったと思うし、冥利につきる。自分を表現するために始めた音楽だけど、ある程度の年になってくると、自分は勝手に育ったわけじゃないし、生かされてるってことが分かってきて、折につけ恩返しをしたくなるわけですよ」
今度の始球式にしても同じこと。
「8月6日だしね、そこで投げさせてもらう意味は大きい。俺は広島で育ったし、じいさんやばあさんからひどい話も聞いたりして、他の地方の人よりも知識はあると思う。けど、それくらいのことでさ。震災があって、福島のことがあったから、また考えるようになったけど、それまでは毎年8月6日が近づいてくると、被ばくだとか平和について考えるけど、終わったらまた来年って感じだった。だから、俺が、ピースナイターに参加することで、平和について考えることが少しでも広がるなら……多少、役に立ってるのかなって思うんだよ」
子どものころ、おじさんに焼きそばとコーラを買ってもらうのがうれしくて通った広島市民球場ではないが、当時は自らが立つことも考えられなかったマウンドで、吉川は思いを込めた一球を投げる。
今月のオンエアリスト
1.吉川晃司 『FIRE』
1000年猛暑ともされる暑さ、さらに熱く!
2.吉川晃司 『絶世の美女』
リスナーからのライブの感想を受けて
3.子供ばんど『55』
最新アルバム『55』のタイトルトラック
4.吉川晃司 『DA DA DA』
最新アルバム『SAMURAI ROCK』収録曲
5.吉川晃司『光と影』
ミュージカル 『SEMPO』劇中歌
6.吉川晃司『SAMURAI ROCK』
迷えるリスナーに喝っ!