BOOK 善人は、たちまち悪人になりえる。

『七色の毒』中山七里

 累計40万部を売り上げた『さよならドビュッシー』の著者の連作短編集。主人公は話題作『切り裂きジャックの告白』の犬養隼人刑事。元俳優の卵で、男性容疑者の嘘は必ず見破るという観察眼の持ち主だ。各短編に付けられた色の毒を持つ登場人物たちは、善と悪の両方の顔を持ち、最後まで誰が善人なのか悪人なのか、また真実はどこにあるのかがまったく予想不可能な展開。著者自ら最高傑作と語る同書の読み手の想像を上回るストーリーはドキドキの連続で息もつけぬほど。人の心にある毒がじわじわと心を侵食してくるような恐怖とそれに浸りたい好奇心に満たされる。



七色の毒【著者】中山七里【定価】1400円(税別)【発行】角川書店