友香の素 vol.129 黒谷友香はガリバーだった?!
この前、道を歩いていた時にふと目に入ってきたものがあり、立ち止まって見てみた。
足元に何やら黒い帯状の物体。しかも、波を打ったように全体がざわざわとうごめいている。「ん?これは一体何だろう」と、屈み込んで地上に顔を近づけて見ると、アリの行列! すごい数! 普段、見かけるような、一列の細っこい行列ではなくて、3センチはある。アリには、噛まれたら痛いだろうなと思う1センチくらいの大きいのから、それに比べると5ミリくらいの、か弱そうに見える小さめのもいるけれど、その行列は小さめサイズのほうのアリ。それぞれがお互いが前後左右、一馬身ならぬ、一(いち)アリ身!? も離れず、ひたすらに黙々と、ずらずらずらずら前進していたのである。時折、何かちいこい白い物をくわえているアリもいて、目を凝らしてみて見ると、幼虫らしきものに見える。う〜ん‥‥アリの引越か?! しばらく座り込んで観察していた私だが、用事があったのを思い出して、「こりゃいかんっ」と立ち上がる。
そのアリ話を友達と集まった時にすると、虫を触れるか、触れないかの話になった。アリ話の時も友達の1人は「え〜、アリとか小さい物がいっぱい集まってるのは気持ち悪い〜」と顔をしかめている。じゃあ、今度は虫で何が触れて、何が触れないかという話に。すると、バッタやカマキリは何とかぎりぎり持てるとか、蝶々の鱗粉がイヤとか、いろいろ。「じゃあ、セミは?」と聞くと「ギャ〜! セミなんて持てないよ。カブトムシとかカナブンもちょっとダメかも」「え、私も〜」ともう一人の友達。
女子って思った以上に、虫については、か弱いのねん。何だかちょっとだけ、そんな彼女たちが可愛く思えて羨ましくなる。そう、私はがっつり持ててしまうのだった。子供のころから海や山の中で自然と触れ合ってきたから? いや、単にわんぱくだから? まあ、持てるものは仕方ない。一度なんて、まだ脱皮する前の状態のセミの幼虫を助けたこともあった。夜道をジョギングしていたら、アスファルトの上をヨタ、ヨタっと歩いていた幼虫を見付けたのだ。「こんな所にいたら踏まれるよ」と私は優しく掌に乗せて、木のある場所まで運んだのだ。なんて可愛い、大きなまん丸い目。その目で見つめられた私は、心の中で会話する。「助けてくれてアリガトウ」と幼虫。そして私は「立派なセミになるんだよ」、と。その時、私は自分をガリバーかと思ったことを覚えている。