宮崎駿「僕の長編アニメの時代は終わった」

『千と千尋の神隠し』など、数々の人気アニメーション映画を送り出してきた、宮崎駿監督が6日、都内で会見し、「僕の長編アニメーションの時代は、はっきり終わったんだと思う」と話し、公開中の映画『風立ちぬ』をもって長編アニメの監督を退くことを公式に発表した。

 冒頭、「何度も辞めると言ってきたので、どうせまたかと思われるでしょうが、今回は本気です」とにこやかにあいさつした宮崎監督は、約1時間30分にわたって、国内外から集まった報道陣からの質問に一つひとつ丁寧に答えた。

 映画製作の第一線から退く理由については、まず、加齢による体力低下によって長時間の作業ができなくなってきたと説明。前作『崖の上のポニョ』を作っていた時よりも「今は30分早く机を離れている」とし、めがねをはずして「こうやって描くんです」とジェスチャーをふくめつつ、このままでは次回作までには今まで以上の時間がかかってしまうと話した。また、長編よりも「やりたいことがある」といい、自らが館長を務めるジブリ美術館に展示する作品制作などに意欲を見せた。引退宣言を翻すような可能性について問われても「私は自由です。やらない自由もある」と、“本気”を強調。ただ、「車を運転できるうちはアトリエには通う」とした。

 今後のジブリについて質問が飛ぶと、「やっと上の重しがなくなるから、こういうものをやらせろという声が若いスタッフから(プロデューサーの)鈴木さんに届くのを願っています」と、コメント。「若手にアドバイスしたり監修ということで今後の作品に関わることはあるか?」の質問についても「それはない」と若手の成長を見守る姿勢のようだ。

 引退については、最新作『風立ちぬ』の最初の完成試写を見た後、鈴木プロデューサーに告げ、8月5日にスタジオジブリのスタッフに自ら報告。ベネチア国際映画祭で発表したのは、世界中にファンがいることから効率的に伝わると考えたためだという。

 さまざまな作品を通じて、「子供たちにこの世は生きるに値するということを伝え」てきた宮崎監督。自由になって、長編アニメーションとは違った形で、同じメッセージを伝えてくれるはずだ。