BOOK 統合失調症で10年活動休止。そこから復活した芸人の記録
『統合失調症がやってきた』ハウス加賀谷・松本キック
「ボキャブラ天国」などで活躍し、人気絶頂だったお笑い芸人ハウス加賀谷。病気説、失踪説、引退説など、いろいろな噂が囁かれていたが、まさかこんなに苦しい闘病生活を送っていたとは…。小さいころから親の顔色をうかがい、勉強でも習い事でも親の言うままに必死でこなしてきた加賀谷少年。しかし、そんな生活にも限界がきて、小学校5年生で燃え尽きてしまった。しかし、本当の悲劇は中学校に入ってから。友達と遊ぶことがなにより好きだった彼がある日を境に、人と関わることが怖くなる。友達や周りの人が彼のことを「臭い」と言い出したから。しかし、それは幻聴で「自己臭恐怖症」という精神疾患だったのだ。結局加賀谷はそれ以降、病気を抱えながら芸人を目指し、芸人になり、成功するのだが、気がつくと普通の生活も危ういほど、深い深い海の底に沈んでいた。相方の松本キックによる聞き書きの同書は、その壮絶さゆえ読むのがつらい所も。しかし、辛抱強く待ち続けてくれる人(相方)の助けもあって、芸人として復活したその姿に、勇気づけられる人もたくさんいるはずだ。
統合失調症がやってきた【著者】ハウス加賀谷・松本キック【定価】1300円(税別)【発行】イースト・プレス