江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
一眼国(いちがんこく)
その昔、諸国を歩きながら修行をしている六十六部(ろくじゅうろくぶ)という男がいた。その六十六部が、客から金を取り、珍しいものを見せる香具師の所に一晩泊めてもらうことに。香具師は、変わったものがあれば、捕まえて見世物にしたいと思っていたので、全国を歩き回っている六十六部に珍しい話や変わった代物がないか聞き出そうとしていた。そんな話はないと答えた六十六部だが、香具師が酒や食事、さらに一宿の恩をたてにしつこく聞くとしぶしぶ話し出した。
「つまらない話かもしれませんが、実は一つ目小僧にあったことがあるんです」。そう話すと、香具師は大乗り気。よくよく聞くと、江戸から百里ばかり行ったところで大きな原っぱに出たのだが、行けども行けども民家が見つからず、ついに野宿を決意したという。ふと見ると大きな榎の木があり、その根元で一休みしていると、どこからかお寺の鐘がゴーンとなり、生暖かい風が…。その時後ろから「おじさん、おじさん」と子どもが呼ぶ声。子どもがいるなら民家もあるだろうと振り返ると、そこには4つか5つぐらいの小さな女の子。しかしよくみると、のっぺらぼうで、額に目が一つついているだけ。恐ろしさのあまり、振り返りもせず一目散に逃げだした。
それを聞いた香具師は、大喜び。その一つ目を捕まえて、見世物小屋に出したら、大評判で大儲けができると、早速六十六部に聞いた場所へ向かうため旅に出た。江戸まで出てから、百里ほど歩くと、聞いていた通りの大きな野原が。榎の木下で待っていると、後ろから「おじさん、おじさん」という子どもの声。見ると案の定、目が一つ。「しめた!」とばかりに、子どもを小脇に抱え走り出すと、びっくりした子どもが「キャー」と悲鳴を上げた。するとどこから現れたのか、大勢の百姓たちが香具師を追いかけてきて、とうとう捕まってしまう。縄で縛られ、お奉行に引っ立てられ、顔を上げると奉行もお役人も百姓たちもみんな一つ目。驚く香具師の顔をみて奉行もびっくり。「やや、こいつ目が二つもある。調べは後回しだ。早速見世物に連れて行け」。