クリスマスよりもお酉様! 都内各所で酉の市
11月の酉の日に行われる酉の市。最初の酉の日である「一の酉」となった11月3日、都内の寺社は、武運長久、開運、そして商売繁盛を祈願する人たちでにぎわった。酉の市は年末を知らせる風物詩。今後も、15日(二の酉)、27日(三の酉)と続く。クリスマス気分を楽しむ前に、お酉様を訪れてみては?
色とりどりに飾られた縁起熊手をずらりと並べる露天や食べ物の露天であふれかえる境内。遠くからわっと歓声が上がり、柏手の音が聞こえる。大きい熊手を担いで行く人、かわいらしいサイズの熊手を大切そうに抱えて歩く人、そしてそれを笑顔で眺める人。毎年、11月になると都内はもちろん全国各地で行われる酉の市の風景だ。今年も終わりに近づいたことを知らせる風物詩ともいえる。
11月の酉の日に行われる、酉の市。武運長久、開運、そして商売繁盛を祈願するものだ。都内でも各所で行われているが、特に有名なのものが、浅草の鷲神社、新宿の花園神社、そして府中市の大國魂神社。この3カ所は、関東三大酉の市ともされている。なかでも、多くの参拝客を集めるのが、浅草の鷲神社。江戸の酉の市の原点ともされる由緒のある酉の市であること。また、隣にある長国寺でも酉の市が開かれていることから、お寺と神社の両方にお願いできるためだ。また、午前0時から24時までと終日開かれることもあり、毎年70万〜80万人が足を運ぶ。
酉の市を象徴するのが、熊手。「かっこめ」とも呼ばれる熊手御守は、開運や商売繁昌のお守りとして授与されるもので、縁起熊手と併せて販売されている。ずらりと並んだ熊手店では独自のデザインやこだわり、技法にそった、熊手を小さなものから大人でもかつぐのが大変そうな巨大なものまで、所せましと並べている。
値段は小さいもので1000円ぐらいから、大きなものになると数十万円の値をつけるものもある。参拝客は気に入った熊手を見つけたら、お店の人と値段を交渉。お守り、利益を願うものであるにも関わらず、腕次第では値切れてしまうというのもまたおもしろいところ。買わずともその交渉の様子を見ているのも楽しい。より高価なものの決着がつくと、他参拝客から「わーっ!」「おー!」などと、歓声も上がる。そして、居合わせた人皆で柏手を打つ。自分が買っていなかったとしても、ご利益をなんとなく分けてもらった気分になってくる。
また、もうひとつの楽しみがさまざまな露天。特に、縁起物を販売する店を見て回るのも楽しい。八頭は子宝に恵まれるという大きな芋、金持ちになるようにと売られていた黄金餅、切山椒など、お店の人にその縁起についてたずねたりしながら買うのも、酉の市ならではの楽しみ方だ。もちろん、お祭りの定番や居酒屋レベルのメニューを出す飲食の露天もあり、参拝で空いた小腹を十分に満たしてくれる。
さまざまなアングルで楽しめる、酉の市にはファンも多く、なかには都内各所の酉の市を巡る人も。ご利益についてはどうなのかは疑問を残すが、11月のイベントとして楽しむというのもまた、粋といえるかもしれない。
11月3日が一の酉で、次の酉の市の開催は15日の二の酉。今年は三の酉(27日)まであって、まだまだ酉の市が楽しめそう。三の酉まである年は火事が多いという話もあるが、それはそれ。クリスマスイルミネーションが輝き始めたけれど、それよりもまずは酉の市。日本の11月を堪能しよう!
写真・Natsuki Sakai/アフロ
〈関東三大酉の市〉
浅草 鷲神社(台東区)江戸時代から続く酉の市。規模、にぎわいともに日本一。酉の市の原点ともされる。
花園神社(新宿区)明治時代に開始。熊手を売る露天商のほか、見世物小屋も名物。毎年60万人が訪れる。
大國魂神社(府中市)江戸時代から商人や水商売の人々に人気。豊作祈願の農民の参拝者も多かった。
その他にも、浅草西の寺 長國寺(台東区)、大鷲神社(足立区)、大鳥神社(目黒区)、富岡八幡宮(江東区)、荏原神社(品川区)、葛西神社(葛飾区)などでも開催。