BOOK この落語家を聴け! この落語家は聴くな!! とまでは言わないけど……
『落語家の通信簿』三遊亭円丈
芸歴49年の三遊亭円丈が、落語家の視点で落語と落語家を論評した本を出版。前口上として、その意味をこう記す。「一落語家から見て、落語評論家という存在はどうもウサン臭くて信用できない。というのも、野球評論家は元野球選手だが、落語評論家は元素人なんだ。これが今ひとつ、プロの落語家から見ると説得力がない—」。確かに、言っていることは分かるが、現役の落語家が、同じ高座に上がる同業者のことを、批評し採点するというのは、前代未聞だろう。論評されているのは、伝説の名人から大長老、大御所、中堅、若手、上方落語家まで53人。もちろん、そこまでの覚悟なので、ほめてばかりではなく、かなり厳しい採点をしている人もいる。しかし読んでいて不快にならないのは結局のところ、著者の中にある落語へ対する愛が見えるから。自分の中にある葛藤や弱さも吐露し、身を削って書いているのが伝わってくるのだ。各芸人のオススメの演目も紹介しているので、気になる落語家がいれば、その演目を聞いてみよう。どんなにボロクソに書いていても、楽しめる。そこには平等で真摯な視線があるから。
『落語家の通信簿』【著者】三遊亭円丈【定価】本体840円(税別)【発行】祥伝社