長島昭久のリアリズム
緊急提言!「あるべき秘密保護法制とは何か」
およそ主権国家である以上、国家の存立と国民の安全を保障するため一定の秘密は必要であり、一定期間秘匿しておく必要性も認めます。実際、そういった認識に基づいて、民主党政権下で秘密保護法制の立法作業に着手しました。しかし、私は今回提出された政府原案を見たとき、残念ながら私たちが策定しようとした秘密保護法制とは根本的に認識が異なると感じました。基本的な制度の「設計思想」が異なるのです。
議論の大前提として、「行政の情報は、主権者たる国民のものである」という民主主義の根幹に関わる認識を今一度強調せねばなりません。だからこそ、私たちは、情報公開法と公文書管理法の改正案も併せて提案しました。民主主義社会において、「情報公開」と「秘密保護」という二つの公益のいずれも重要なのです。時間をかけて二つの重大な公益を満たす「一致点」を見出すというのが筋だと考えたからです。
その意味で、法案の致命的欠陥は、秘密の指定や運用について、他の先進民主主義国が持つような政府を監察する「第三者機関」の設置を想定していなかったことです。野党の指摘を受けまとめられた修正案では「付則」に秘密の指定や解除の基準等を検証し、監察できる新たな機関の検討が書き込まれましたが、いつまでにどのように検討するのか、本当に設置されるのか、まったく保証の限りではありません。これでは、実際に行政が決めた秘密が適正に運用・管理されているのか、国民の側から客観的に確認する方法がないままに「見切り発車」することになりかねません。
民主党は、独立行政委員会である「情報適正管理委員会」を設置して、政府が秘密を適正に管理するように監視するために、秘密の指定や解除、秘密を扱う公務員の適格性確認など運用基準の決定、調査・勧告、苦情の申出への対応、国会への報告など、その任務や権限なども具体的に規定した法律案を提出しました。秘密を取り扱う公務員が、不当な秘密指定の存在を知った場合、委員会に通報する義務も定めています。さらに、この委員会の独立性を担保するために、委員は国会が指名することとなっています。
政府は拙速を避け、秘密の指定、管理、解除、公開の適正性を担保する仕組みの充実に真摯に取り組み、国民の間に広がる不安や懸念を払拭すべきです。
(衆議院議員 長島昭久)
(お断り:今回は、「集団的自衛権」についてのシリーズを中断して、緊急提言とさせていただきました。)