“夫婦の絆”がアートそのもの!? 『キューティー&ボクサー』 ザッカリー・ハインザーリング監督
29歳の若き映画監督、ザッカリー・ハインザーリングが魅了されたのは、芸術を追求し続ける、少し風変わりだがとても一途な、日本の芸術家夫婦だった—。“ボクシング・ペインティング”というユニークな表現手法で知られる前衛芸術家・篠原有司男とその妻であり同じくアーティストの篠原乃り子の日常を追ったドキュメンタリー。監督のザッカリーは「実は篠原有司男というアーティストのことをまったく知らなかったんです」と言う。そんな彼が篠原夫妻を被写体に選んだ理由、それは「有司男さんの人生に興味を持ったんです。決して若いとはいえない彼が、異国のニューヨークで、芸術のためにすべてを捧げて生きている。若いころの情熱をそのまま持ち続ける日常を撮ってみたいと思いました」。
現在80歳を超えてもその創作活動が前進し続ける。確かにカメラを向けたくなる存在だ。しかし監督は途中で大きく方向を転換する。「一緒に時間を過ごすようになってから妻の乃り子さんにも非常に引きつけられたんです」。監督は、乃り子を“アヴァンギャルドな芸術家の妻”というだけでなく、長い年月をかけて自己表現を確立していく一人のアーティストとして映し出す。
「実は有司男さんはずっと自分だけのドキュメンタリーだと思っていて、完成した作品を見たときは“俺の映画じゃなかったの?”って驚いてました(笑)。でもこの作品でも描かれる通り、有司男さん自身も自分をアシストしてくれる存在というだけでなく、対等な表現者として乃り子さんの事を見るようになっていったので、2人とも作品のことは気に入ってくれました」。篠原夫妻のもとへ通い、作品を仕上げるまで5年近くかかった。「分からないけど(笑)、2人は僕の中で本当に大きな存在になっています」。
監督:ザッカリー・ハインザーリング 出演:篠原有司男、篠原乃り子他/1時間22分/ザジフィルムズ、パルコ配給/12月21日よりシネマライズ他にて公開 http://www.cutieandboxer.com/http://www.cutieandboxer.com/