日本列島に映画の春、到来
『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014』
早春の北海道・夕張市の風物詩『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』が今年も2月27日から3月3日に開催され、多くの映画人と地元市民らが一体となり盛況のうちに幕を閉じた。地方開催の映画祭の中でも、映画祭に参加するリピーターが多いといわれるのが、この“ゆうばりファンタ”。イマジネーションとエンターテインメント性豊かな作品が集うだけでなく、インディペンデント映画の魅力を再発見できる映画祭としても注目を集めている。映画ファンと作り手からこよなく愛されるファンタスティッな映画祭、その魅力をリポート!
映画愛あふれるファンタスティックな映画祭
ファンタスティック映画祭といえば、権威ある映画祭では取り上げられにくい、ファンタジー、SF、ホラー、アクション、サスペンスといったジャンルにフィーチャーする映画祭。それらジャンル映画に目を向けるだけでなく、オフシアター、インディペンデント系の作品から秀作を発掘する場ともなっているのが、この“ゆうばりファンタ”だ。メインのコンペ〈オフシアター・コンペティション部門〉には、今年もファンタスティックな力作が勢ぞろいした。主演女優・亜紗美の“全裸”アクションが絶賛された『女体銃/GUN WOMAN』をはじめ、カニバリズムをテーマにした青春映画『フリーキッチン』、片思い相手のクローンを作ったことから巻き起こる騒動を描いた『さまよう小指 』など、他の映画祭ではなかなか登場しない個性的な力作ばかり。
今年の映画祭は天候にも恵まれ、また札幌と夕張市を結ぶバスが運行し交通の便が良くなったことなどから、動員数は昨年を大きく上回り1万3000人以上を記録した。
「ただいま」「おかえり」ゆうばりって温かい
まだまだ雪深く、夜になれば気温は零下。そんな季節に行われながらも、参加者が感じるのは夕張の町の“温かさ”だ。訪れた人を「おかえり」と出迎え、炊き出しや臨時のカフェを開き、パーティーのために手料理を用意したりと、町の人々のサポートが映画祭を支えているといっても過言ではない。そのため、期間中は地元の人々との交流も参加者の大きな楽しみとなっている。会場周辺の居酒屋では毎晩夜遅くまで、映画関係者や一般の参加者が入り交じり、飲み、食べ、語り明かす。夜の夕張は、ある意味“陸の孤島”。付近の居酒屋に行けば、ほぼ間違いなく参加者がいる。初対面同士でも、作る側・見る側と立場が違っても、映画の話で盛り上がることができるのだ。出品監督や俳優の中にも、そんなゆうばりファンタの空気にハマり“リピーター”となる人が少なくない。今回グランプリを受賞した竹葉監督も、過去に本映画祭に参加した際にできた人脈をもとに映画製作を始めた作り手の1人だ。ゆうばりファンタならではの温かさは、映画好きならぜひ体験してほしい。
【URL】http://yubarifanta.com/
【今年の主な受賞者一覧】オフシアター・コンペティション部門:グランプリ『さまよう小指』(監督:竹葉リサ)※シネガーアワード(批評家賞)W受賞
審査員特別賞:『女体銃 ガン・ウーマン』(監督:光武蔵人)
北海道知事賞:『リュウグウノツカイ』(監督:ウエダアツ)
スカパー!映画チャンネル賞:『死ななくて』(監督:ファン・チョルミン)
インターナショナル・ショートフィルム・ コンペティション部門:グランプリ『JUNK HEAD 1』(監督:堀貴秀)
ニューウェーブ・アワード受賞者:クリエーター部門 宮藤官九郎/俳優部門 東出昌大/女優部門 武田梨奈
【オフシアター・コンペティション部門 審査員】 根岸吉太郎(監督)、斎藤工(俳優)、しいなえいひ(俳優)、トム・メス(批評家)、トーマス・ナム(プチョン映画祭 企画マーケット NAFFディレクター)
【インターナショナル・ショートフィルム・ コンペティション部門審査員】
キム・ユージン(富川国際学生アニメーション映画祭プログラムディレクター)、荒牧伸志(監督)、鹿角剛(VFXスーパーバイザー)