「ビットコインは通貨でない」政府が公式見解を閣議決定も…
インターネット上の仮想通貨ビットコインの世界最大級の取引所「Mt・Gox(マウントゴックス)」(東京都渋谷区)が取引を停止した問題で、同社は2月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し経営破綻した。不正アクセスによりビットコインが失われたとしており、流動負債総額は約65億円で債務超過の状況だという。
同社のマルク・カルプレス社長は問題発覚後初めて公の場に姿を現し、「申し訳ない」と日本語で謝罪。同社長らの説明によると、2月初めごろから、システムのバグ(プログラムの欠陥)により不正アクセスが相次ぎ、正常に完了しない取引が増加。その後、同社と顧客分の計85万ビットコイン(サイト停止直前レートで約114億6000万円相当)のほぼすべてが失われたことが確認されたという。28日夜の他取引所の最新レートでは、約480億円に相当するという。
同社は、ビットコインが不正アクセスで盗まれた可能性が高いとして、不正アクセス禁止法違反罪などでの刑事告訴を検討するなど被害者であることも強調した。
告訴先になる可能性のある警視庁は「誰が被害者か確定する段階にはない。どんな犯罪が成り立つかは慎重に検討する必要がある」(同庁幹部)としており、電磁的記録不正作出(電子データ改竄)など、ほかの容疑も視野に入る。
ビットコインは既存法の枠外に置かれ、預金などとは異なり公的保証はない。規制する法律もないことから、預かり金の管理状況も不透明だ。便利さが先行する「未来の通貨」だが、利用には自己責任が強く求められる。
通常の預金なら、銀行など金融機関が経営破綻した場合、預金保険制度により1人当たり元本1000万円と利息が保護される。だが、ビットコインは発行者がおらず、法律上「通貨」に該当しない。株など投機的な金融商品を規制する金融商品取引法の枠組みにもかからない。
そんななか政府は7日、ビットコインが「通貨に該当しない」とする公式見解を閣議決定した。相場で価格が変動する金などの貴金属と同様に「モノ」として扱う。課税条件を満たせば所得税や消費税の対象にすると表明。銀行は取引の仲介や通貨との交換、口座の開設はできないとした。
政府見解では、ビットコインは「各国政府や中央銀行による信用の裏付けもない」と指摘。銀行法や金融商品取引法上の取引には当たらないため「銀行が営むことができる業務に該当しない」と明記した。購入する際には消費税を、売却益が出れば所得税を課す方針。犯罪の収益を隠した場合には「(犯罪収益移転防止法違反の)罪が成立することがある」として、取り締まりの対象となる可能性を示した。
しかし「通貨ではない」と明示されたため、投資家保護に手厚い金融商品取引法では規制の対象外となる。金融庁や財務省は「金など貴金属と同じ『モノ』で、所管外だ」と主張する。電子商取引(EC)を所管し、貴金属に近い「モノ」を扱う商品先物取引法を監督する経済産業省も、「ビットコインの特質は不明」(商務流通保安グループ)と及び腰だ。
米誌ニューズウィークは6日、仮想通貨ビットコインの考案者とされる「サトシ・ナカモト」氏とみられる男性を探し出したと報じた。
同誌の報道を受けて内外のメディアが男性の自宅に大挙して押しかけたが男性はAP通信の取材に「エンジニアリング(の仕事)にはもう関与していない」と説明したつもりだったのが考案者と誤解され、最近までビットコインのことも知らなかったと主張。報道の真偽は依然不明だ。ビットコインは「サトシ・ナカモト」を名乗る人物がネット上で発表した論文を元に賛同者が開発したとされる。