小・中学生にも届くアルバムを作りたいと思った 米津玄師
動画サービス『ニコニコ動画』で数々のボーカロイド作品をハチ名義で発表し、人気ボカロPとして名をはせた、米津玄師(よねづ・けんし)。先日、最新作『YANKEE』を発表。本人いわく、本作は新たな挑戦で「音楽を意識して聴かないような人、小学生や中学生にも届くものを作りたいと思った」という。
「一曲一曲、一音一音、一言一言、つま弾いていくように制作しました。もちろん自分が好きな音楽・曲であることは前提ですけどね。自分のエゴというか、自分の思うことだけで貫いて作り上げることはカッコいいですけど、それに終始してしまうのは、虚しい。ポップであるために試行錯誤するっていうのも、またカッコいいと思う」
すべてを1人で作り上げた前作と違い、ミュージシャンとスタジオに入り、エンジニアも加わって、チームで臨んだ。ストレートな歌詞、体にすっと入り込んでくるメロディーやサウンド。とても、ポップだ。もちろんそこには、米津の言うところの彼の“エゴ”もいいバランスで顔を出す。子供のころ漫画家になりたかったという彼が好んで読んでいたという「努力・友情・勝利」もの。このアルバムの制作はそのプロセスにちょっと似ている。
「……勝利っていうのは分からないですけどね(笑)。ただ、ひとつ峠を越えた感じはあります。ここに行くしかなかったというもの、それをやれたと思う」
ところで、タイトルの『YANKEE』は、この言葉の持つ「アメリカにおける移民」の意に由来するという。「ボーカロイドで曲を作り、ニコニコ動画というプラットフォームでやってきた人間が、別のフィールドでやりだしたわけで。……所せん、移民みたいなもんです」と、本人。彼のコメントは少々シニカルだが、“移民”だからこそ響かせることができるポップもある。それもまた事実なのだ。