江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 【ネタあらすじ編】
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
おしゃべりで気の強い女髪結いのお崎は、またしても夫婦喧嘩の尻を仲人のところに持ち込んできた。お崎の旦那で7つ年下の八五郎は典型的な髪結いの亭主。仕事もせず昼間から酒を飲み、毎日遊んで暮らしている。そのくせお崎が仕事で少しでも遅くなると、グチグチと嫌味をいうから手に負えない。そんな亭主の愚痴を3日とあけずに聞かされている仲人は、「女房を働かせて、昼間から酒を飲んで遊んでいるような男とは縁がなかったと思って別れてしまいなさい」と突き放した。しかし文句は言っても年下の旦那に惚れているお崎。「ああ見えて、優しいところもあるんですよ」とノロケる始末。お崎はただ、若い亭主の本心がわからず不安なのだ。そこで仲人は2つの話をお崎に聞かせる。まずひとつは、唐土(もろこし)、つまり中国の孔子という偉い学者の話。孔子が旅に出て留守にしている間、厩が火事になり、たいそう可愛がっていた白馬が焼け死んでしまった。しかし孔子は馬のことには一言も触れずに、家来たちの無事を喜んだという。そして2つ目の話は、麹町のさる殿様の話。たいそう瀬戸物に凝っていたこの殿様、大切にしていた自慢の皿をお客に見せて、その片付けを妻に命じた。しかし妻がそれを運ぶ途中、階段で足を滑らせ、瀬戸物もろとも転落してしまった。その音を聞きつけた殿様、真っ青になって駆けつけ「皿は大丈夫か? 皿は割れてないか? 皿は、皿は…」と叫ぶこと36回。その後、妻の実家から「妻の体より皿を心配するような不義理な人に娘はやれない」と離縁され、孤独な晩年を過ごしたという。そこで、仲人は「お前さんの亭主の大切なものを壊してみて、その反応を見てはどうか。亭主が“麹町”ならきっぱり別れたほうがいい」と提案。家に帰ったお崎は、亭主の大切にしている瀬戸物の茶碗を足を滑らせた振りをして、叩き割った。すると亭主は「おい、大丈夫か? どっか体に怪我はないか?」と優しい言葉。それを聞いたお崎「うれしい。“麹町”じゃなくて“もろこし”だね。お前さん、そんなに私の体が大事かい?」。「そりゃそうよ。お前が怪我したら、明日から遊んでいて酒が飲めねえ」。