江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 「ネタあらすじ編」
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
やかん
森羅万象、この世の中に知らないことがないというご隠居のもとを八五郎が訪れた。「おお、よく来たな愚者。まあまあ上がりなさい、愚者。お茶でもどうだ、愚者」「そのグシャってなんですか?」「愚か者のことじゃよ、愚者」。愚か者と言われてカチンときた八五郎、知ったかぶりの隠居をギャフンと言わせてやろうと隠居に問いかける。「魚のマグロはなんでマグロって言うんですか?」「体が真っ黒いからマグロだ」「ヒラメは?」「平たいところに目がついているからヒラメ」「カレイだって平たいところに目がついていますが」「あれはヒラメの家来で家令をしている」「じゃ、ウナギは?」「もともとはヌルヌルしているからヌルが訛ってノロと呼ばれていて、ある時そのノロを鵜が食べようとした。しかし、なかなか飲み込めない。鵜が難儀したから、鵜、難儀、鵜難儀でウナギだ」と一歩も譲らず。そこで次は日用品の名前の由来を聞くことに。「茶碗はなんで茶碗と言うのですか?」「ちゃわんと置かれるから」「土瓶」「土でできているから」「鉄瓶」「鉄でできているから」「じゃ、やかんは?」「矢でできて…いないな。それはだな、昔…」「ノロと呼ばれていましたか?」「いや違う。やかんは水沸かしと言われていた」「それを言うなら湯沸しじゃないんですか?」「だからお前は愚者なんだ。水を湯にするから水沸かしじゃ」「なるほど。で、やかんはなんでやかんと言うのですか?」「戦国時代の合戦で夜討ちをかけられた若者が、混乱の中兜を探したが見つからない。その代わりにとそこにあったやかんを手に取り、中の湯を捨て頭にかぶった。そしてその姿で戦場へ。突進する若者へ敵の矢が一斉に放たれ、それが水沸かしに当たり、カーンという音。矢が当たってカーン、矢がカーン、矢カン、でやかんだ」「蓋はどうした?」「つまみを口にくわえて面に」「つるが邪魔では?」「顎にかけて忍緒に」「注ぎ口があるが」「名乗りを聞くときにあそこから聞き取るための耳がわり」「でも逆さにかぶったら下になるから聞づらい」「上を向いてたら雨が入る」「耳の代わりなら両方にないと不便では?」「ないほうは枕をして寝る側だ」