10周年記念アルバム『MUSE』をリリース　加藤ミリヤ

「周りの人たちに感謝って感じです。加藤ミリヤっていうチームなので、そのために一生懸命やってくれるみんながいて、私の歌を聴いてくれるファンがいて。私頑張ったなっていう自分に対するねぎらいの気持ちは一切ないですね」

　10年を振り返って今思うことを尋ねると、加藤ミリヤはそう答えた。

　16歳でデビュー。リアルな心情を歌った楽曲で、“女子高生のカリスマ”と呼ばれるようになった。「ファンの子の存在」が彼女を突き動かし、音楽だけでなく、ファッションやジュエリーのデザイン、小説と表現のアウトプットする場所も広がった。現在、26歳。一つひとつの作品を重ねて、変化・成長しながら、今もなお、リアルを歌って女性たちから絶大な支持を集めている。

「言いたいこととか、基本的なメッセージ的なことは変わってないですね。自分の不甲斐なさであるとか、世の中にこう言いたいとかいう怒りが自分の原動力になってるところは変わっていません。ティーンのころのモヤモヤ感は今もありますし、それがなくなったら自分の歌がつまんなくなっちゃいそう（笑）。そういうなかで、自分でも大きな変化だなって思う部分もありました。それが、“愛してる”って気持ちが自分に合ってるっていう感覚です。超きれいごとに聞こえちゃうかもしれないですけど（笑）。10代のころって恋人に対しても周りの人に対しても“愛してほしい”“こういう私だけを愛して”って思ってました」
　そんな感覚を持ちながら完成させたのが、10周年記念アルバム『MUSE』。MUSE＝女神をコンセプトにした。

「この10年を振り返ると、自分は女の子のために歌を書いてきたんだなって改めて思いました。女の子のためのビジュアル作りをしてきたし、“ミリヤみたいになりたい”“ミリヤなら分かってくれる”って思ってもらえる歌手になりたいって。そんな女の子たちのMUSE（ミューズ）になりたかったんです」

　それに、もう一つの要素が加わった。

「自分が聴く音楽も女の子の歌ばかりだし自分にもMUSEがいるなって、そんなことを考えていたとき、中島美嘉さんや、HYの仲宗根泉さんとのコラボレーションが続いて、“これ、サインかもしれない！”って。MUSEたちとコラボレーションしようって思ったんです。AIちゃんやテルマとはコラボしたことなかったので3人でやったら面白いだろうなと思いましたし、ダメもとでSUGAR SOULさんにもお願いしたんです。10周年っていう、今だからこそいろいろなことができるんじゃないかなって思ったんです」

　ミリヤを含めMUSEたちの表現力に圧倒される作品だ。そのなかで、MUSE＝ミリヤが聴けるのが、タイトルトラックの『M.U.S.E』。これまでのミリヤ、そしてこれからのミリヤが詰まっている。

「自分のこれまでの曲をサンプリングしているんですが、作っている時は思い悩みましたね。選曲もそうだし、できた音に対して言いたいことが山ほどあったし、今までの曲の部分部分を歌いたいとも思ったし。それプラス、ファンの子に感謝の気持ちも届けたい！って。1曲のなかにいろんなWANTが多かったんです。大きなチャレンジでしたけど、これができたら悔いはないなって臨んでました」

　本作を携え、残りのアニバーサリーイヤーも駆け抜ける。

「自分自身のことが分かりたくて音楽やり始めたようなもの。10年経ったけど、今でも分からないです。自分って何者なんだろう、誰なんだろう、みたいな。分かってきたところもあります。物事をすごく器用にできる人たちもいっぱいいるけど、私はそうなりたくてもどうしてもなれなくて、だから人よりも努力しよう、頑張ろうって思っていて、でも、それが必ずしも正解ではないんじゃないかって思って、立ち止まることもあります。でも、だからこそ、いろんな可能性がまだあるとも思っていて、それを知りたい。今もまだそんな自分に興味がある、知りたいってやってるんです」
　ミリヤの興味と好奇心はまだまだ尽きない。
（本紙・酒井紫野）