願いと呪いは紙一重。あらゆる女が心にかくまう、黒い魔物–
『神さま、お願い』著者:花房観音
京都の下鴨神社の近く、住宅街の一角に人知れずひっそりとたたずむ神社。その神社には言い伝えがあった。曰く、社に自分の血を吸わせて願い事をすれば叶うと。兄のように慕っていた先輩が、自分の大嫌いな女と結婚してしまった女。おまけに子どもまで授かったと聞いた女は、何を願ったのか(「安産祈願」)。裕福な暮らしをしている専業主婦の女の願いはただひとつ。息子が受験に成功すること。それで女の人生は完璧になるはずだった(「学業成就」)。仕事にやりがいを感じているアラフォーの女。妻子ある男性に心ときめかせているだけで十分幸せだったのに、その男が本性をあらわしてきて(「商売繁盛」)。植物状態になった父親を献身的に看護する女。周りからは自分を犠牲にして偉いと褒められ、家族からも感謝されている。そんな女の心に蠢く真実とは(「不老長寿」)。高校時代からずっと片思いをしていた相手と、2人だけ同じ大学に進学した女。同郷ということもあり、その距離は徐々に近づき、初恋の相手と結ばれた女は幸せの絶頂だった…はずだが(「縁結び祈願」)。優しい夫、素直で真面目な息子を持つ女。絵に描いたような幸せな家族に段々ほころびが。女は願う。仲のいい家族に戻れたら、それだけでいいと(「家内安全」)。6つの短編からなる同書。それぞれ満たされた人生だったはずなのに、ほんのちょっと欲張っただけで、坂道を転がり落ちるように、不幸になっていく。しかしその神社により彼女たちの願いは意外な形で叶えられる。
『神さま、お願い』【著者】花房観音【定価】本体1500円(税別)【発行】KADOKAWA