今週の”人”井上尚弥(ボクシング WBO世界スーパーフライ級王者)

 昨年12月30日と31日に国内で計8つのボクシングの世界戦が行われた。

 中でも最も大きなインパクトを残したのがWBO世界スーパーフライ級王者・オマール・ナルバエスに挑戦し2R3分1秒、KOで破り新王者となった井上尚弥だろう。

 井上はこの一戦がデビュー8戦目。ライトフライ級に続く2階級制覇となったのだが、これは井岡一翔の11戦目を塗り替える日本選手最短記録となった。

 ナルバエスはプロ46戦のキャリアで一度もダウンしたことがないという鉄壁のディフェンスを誇り、敗戦も1つだけ。それも世界5階級制覇のノニト・ドネアに挑戦した一戦だけという難攻不落の王者。井上はこの強敵から6分間で4回のダウンを奪っての完勝だった。

 戦前はこの挑戦には「強気」「無謀」という声も聞かれた。いくら減量苦があったとはいえ、2階級上げての挑戦を不安視する向きもあった。

 しかし減量という鎖から解き放たれた井上のパンチはそんな意見を軽々と凌駕するものだった。あまりの強さに相手陣営がリング上で「グローブの中に何か入れているだろう」と詰め寄ってきたほど。

 6日に行われた2014年の表彰選手選考会では男子プロ最優秀選手とKO賞を受賞。井上が常々口にしてきた具志堅用高氏の13連続防衛という記録に、無敗の3階級王者ローマン・ゴンサレスとの夢の一戦など、井上の動向から目が離せない。

 ちなみに井上がプロ8戦の中で、唯一KOできなかった田口良一は翌31日にWBAライトフライ級王者アルベルト・ロセルを3−0の判定で破り世界初挑戦で新チャンピオンとなった。