「悩みの中に喜びを見つけてほしい」石原壮一郎

 これまで世の中に発表されてきた「人生相談」や「悩み相談」から定番の悩みを取り上げ、それぞれ3〜4人の回答を抜粋した『日本人の人生相談』が発売された。村上春樹、所ジョージ、ホームレスのMさんら各界の賢人(?)たちが日本人の悩みに答える。

「瓦版はさておき、活字の大衆的なメディアが生まれたと同じぐらいから、人生相談はあるんです。それを読むと “人ってこんなことで悩むんだ”とか“そんなふうに考えるとドツボにはまりこむんだ”という悩んでる側の心の動きの面白さが見える。と同時に答えている側の芸を尽くした回答にもいろいろなエッセンスが詰まっていて、そういうところが面白くて、人生相談の記事を収集し始めたのがきっかけでこの本が生まれました」

 答える人によって全然違うアドバイスも

「回答者の個性によって、解決の方法が全然変わるっていうのも見所ですね。ということは、悩みには正しい回答なんかないということになる。つまり悩みは本人が抱えてる重さに比べ、客観的に見たらどうでもよかったりするんです。そのあやふやさというかギャップも興味深かったですね。所ジョージさんや北方謙三さん、瀬戸内寂聴さん、蛭子能収さんの回答を見ていると、その人たちの口調が想像でき、まるで耳元でささやかれているように感じる、ちょっと贅沢な本でもあります(笑)」

 今も昔も変わらない日本人の悩みとは。

「コンプレックスです。体型とか、もてないとか。どうしようもないことを人と比べて自分は不幸だと思う。もっと背が高かったら、ハゲてなかったらすべてうまくいくんじゃないかと(笑)。あとは人間関係ですね。恋愛も広く言えば人間関係ですから、その辺が普遍的な悩みですね。でも人間って生まれた瞬間から悩まなきゃいけない宿命にあるんです。だったらその悩みを深刻に受け止めてへこんじゃうよりは、悩むことを楽しめばいい。イコール生きていくことを楽しむことになると思うので、悩んでいることが自分の糧となるように、楽しく悩みと付き合っていってほしいですね。そんな思いもこの本にはこもっています」

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『日本人の人生相談』
【定価】1404円(税込)【発行】ワニブックス