ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015 Report 2
名画看板めぐりも人気。もはやエリア全体が映画祭会場
映画祭が行われるのは、JR夕張駅近くの宿泊施設や公共会館など複数の会場。会場間は臨時のシャトルバスが行き来しているが、メインの会場間は徒歩で移動しても10〜15分ほど。というわけで、映画祭期間中は、雪に覆われた道をペンギンのように歩く参加者の姿がそこかしこで見られる。ゆうばりファンタの最大の魅力はこのエリア一体がまるごと映画祭会場といえること。街のあちこちに設置された古き良き時代の名画の看板を見つけながら、雪道を歩くのも楽しいのだ。また日中は道沿いで地元の人が屋台やカフェを開いてくれているので、立ち寄っておしゃべりしながら体を温めるのも幸せなひと時となる。
上映会より楽しみ!? 地元民、関係者、ファンとの交流
映画祭では毎年、東京から出発する参加ツアーを組んでいる(1泊1万1500 円〜)。申し込むのは映画祭関係者ばかりではない。映画ファン、ゆうばりファンタのファンが多く参加している。ゆうばりファンタにハマり、毎年のように参加しているリピーターも少なくないのだ。ハマる大きな理由は他の映画祭にはない交流の楽しさだ。この時期、夕張でできるレジャーというとスキーくらいなもの。
飲食店の数も多くはない。となれば映画祭参加者や地元の人ともよく顔を合わせることになり、映画の話題を通して交流が生まれるのだ。地元の人の温かいもてなしも映画祭の魅力の1つとして定着しており、夜空の下で地元民手作りの料理を味わう「ストーブパーティー」は恒例イベントとなっている。著名な映画人、若いクリエイター、映画ファンに地元民が一つになることができる映画祭なのだ。
昨年、惜しまれながら亡くなった名優・高倉健。彼の代表作といえば、夕張で撮影された名作『幸福の黄色いハンカチ』だ。今回、映画祭では代表作の追悼上映会を実施。『鉄道員』の上映時には降旗康男監督と坂上順プロデューサ』が、『幸福の黄色いハンカチ』上映回には撮影当時にエキストラで参加した夕張市民などが登壇し、それぞれに高倉との思い出を明かした。
『幸福の黄色いハンカチ』の名場面を撮影したロケ地は現在「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」として一般公開されており、冬季休業とのころ、追悼企画に合わせて臨時で公開。映画祭参加者も足を運び、名場面を演じてみたり、献花台に花をささげていた。夕張は、映画の感動をとどめ続ける場所なのだ。