わたしたちは親友で、共犯者『ナオミとカナコ』著者:奥田英朗

 服部加奈子は小田直美の大学時代の同級生で、唯一の友達。卒業後、専業主婦と百貨店のOLと立場は違えど、たまに会って食事をする仲だ。直美は希望した部署に配属されず、現在は外商部で個人顧客を担当している。一方、加奈子は銀行員と結婚したのを機に専業主婦になったものの、夫からの暴力に日々怯える生活を送っていた。三十路を前に進むべき道が見つからず、暗澹たる日々を送る2人。自分ではどうしようもないことすぎて、じっと身を潜めたままやり過ごす憂鬱な日常が、いつか変わるのではないかと息を殺しながら耐えているだけの毎日。そんな日が来るとはまったく信じていないのに…。


 そんな時、直美は思いついたのだ。加奈子の夫を殺すことを。これは加奈子が自由になるための戦いであり、これまで虐げられたことに対する復讐であり、何より直美自身が加奈子を助けることで、鬱屈としていた現状を打破し、人生を取り戻すためにやらなければならないことなのだ。そんな直美と加奈子の決断から実行、そして暴かれていく罪と、目まぐるしい展開に、思わず肩に力が入ってしまう。どんなにひどいDVを受けていたからといって殺人は決して許されないこと。そんなひどい男にだって、心配する家族がいて、実際、その家族の必死の捜索のせいで直美と加奈子は追い詰められていくのだ。


 しかし、どうしても2人をひどい人間だと思うことができない。心の中でいつしか2人の逃亡を応援している事に気づく。そう、読者自身も2人の共犯者になるのだ。運命を共にし、男一人を殺すことにした直美と加奈子が行き着く先には、本当に望んでいたものが待っているのだろうか。



【定価】本体1700円(税別)【発行】幻冬舎