【東京のおもてなし】浅草に忍者と侍が出没中 バスにのって追いかけろ!

 浅草のドラマティックな「おもてなし」、劇場型バスツアー『サムライ&忍者 サファリ』が人気だ。浅草寺脇をスタートし、観光スポットを巡りながら、ビルの隙間や観光客グループのなかに出没する侍や忍者を追いかける。ノリのいいバイリンガルガイドと巡る70分はハラハラドキドキしっぱなし……。本紙記者が乗車した。

 ある日の浅草寺脇。外国人観光客と彼らをピックアップする大型観光バスがひっきりなしにやってくる。そこに一台だけ体裁の異なるバスが停車していた。アメリカのサンフランシスコを走っているようなクラシックスカイバスだ。後部は窓がないバルコニーのようなスタイルで、走れば風を感じられる。屋内部分は両サイドが大きな窓になっていて、座席は外向き。浅草の街を隅々まで眺めることができる。

「みなさん、こんにちは! 今日は、サムライ&忍者サファリにご参加いただきありがとうございます! ガイドを務めるケンです。ケンちゃんと呼んで下さい」。浴衣にキャップ姿のDJが、日本語と英語でツアーの開始をアナウンス。トークのリズムはヒップホップ由来か、車内は独特のグルーヴに包まれる。

 バスはゆっくりと走りだすと、吾妻橋方面へ南下。車窓には黄金のオブジェを冠したアサヒビール、その奥には東京スカイツリーも見える。ケンちゃんはクイズ方式で街を案内しながら、乗客のテンションを引き上げる。最初は静かだった車内も、ケンちゃんのクイズや乗客とのやりとりで笑いが起き始めた。ここまでくれば、乗客も楽しむ準備は万端だ。

 突然、車載テレビのモニターに映し出された「忍者、現る」の臨時ニュースで空気は一転。サムライと忍者を追うツアーに参加していると分かってはいるものの、実際に何が起きるのかという期待感に乗客はざわつき始めた。ケンちゃんの声にも緊張が走る。

「見て! あそこに!」。ケンちゃんが指差す方向に見えたのは忍者らしき姿。観光客や仕事の人、夕食のための買い物で自転車の籠をいっぱいにした妙齢の女性の脇を、黒装束の忍者が駆け抜けていく。信号に足止めされたツアー客の事など知らぬ存ぜぬといった雰囲気で、浅草の街に消えてしまった。

 忍者はどこにいる。見失った角を曲がると乗客は文字通り目を皿のようにして忍者の姿を探す。ビルの隙間、観光客のグループの中、店の中まであらゆるところを。その様子がよほど奇妙だったのか歩道を歩く人がこちらをじっと見つめてくる。窓に張り付き、浅草を眺めるのではなく、凝視する十数名。間違いなく異様な雰囲気を放っていただろう。ケンちゃんはマイクを通して街行く人たちに呼びかける。「ちょっと、そこのお兄さん! 忍者を見ませんでしたか?」。素通りしていく人、陽気に手を振る人、カメラを向ける人、今にも泣き出そうかという小さな子ども。十人十色の反応もこのツアーの楽しみどころだ。
 車内は次第に一致団結。「ケンちゃん、あそこに何かいるよ!」と大きな声が後部座席から飛んでくる。歩道で人に声をかけながら忍者探しをするサムライ、元気な町娘に遭遇したり。予想もしていなかった生物に出会ったり……。知っていると思っていた浅草の街も、新鮮に見えた。

 さまざまなハプニングもありながらも、ツアーのゴールは、忍者とサムライの一騎打ち。一般の観光客も見守るなか、忍者とサムライが刃を交えて……。大喝采のなかで幕を下ろした。

 最後にはツアー参加客と健闘を称えあって写真撮影。忍者もサムライも、町娘も、そしてケンちゃんも満面の笑みを浮かべてフレームに収まった。

 国内外の観光客はもちろん、浅草なぞ知り尽くしたという浅草通でも楽しめること間違いなしのこのツアーは、ドキドキハラハラと笑顔をプレゼントしてくれる「おもてなし」。東京を訪れる際のプランに、または観光案内をおまかせされた際にはぜひおすすめしたい。

●ツアー催行は5月24日までの土日祝
 ツアーは、5月24日までの土日祝日を基本に行われ、毎日10時出発、12時出発、14時出発の3便がある。参加には事前の申し込みが必要で、当日は指定の集合場所で出発時間の5分前までに受付をする。4月29日、5月16・17日はツアーは行われないが、5月6、22日には設定されている。申し込みはJTBなど旅行代理店(料金一人5900円)か、JTBのホームページ現地観光プランから予約(料金4900円)する。詳細は「サムライ忍者サファリ」で検索。