大谷ノブ彦 カタリマス
第12回 人にはそれぞれの役割がある
ここ最近考えていることのひとつに「役割」っていうのがあります。というのも先日、日本はもちろん世界でも活躍しているギタリストのMIYAVIさんとご一緒する機会があって、そのなかで彼がこの「役割」ってことについて話してくれたからなんです。
MIYAVIさん、ハリウッドで映画デビューも果たしているんですよ。アンジェリーナ・ジョリーが監督・製作した
『UNBROKEN』という作品で、日本では公開されてなくて、本国ではいろいろ話題になった映画です。それで、彼にアンジェリーナ・ジョリーから影響を受けたことについて聞いてみたんですが、「ミッション(MISSION、役割)を持っている」ってことを言ったんですよ。映画を制作するにしても、国際的な人道問題や難民問題、避難民などの問題提起にしても、母親として養子を迎えてたくさんの子供たちを育てていることだとか、全部そういうことは、自分の立場がどういう影響を与えるかを分かって、ミッションとしてやっている人だと。
このこと、プロ野球、広島東洋カープの黒田投手の見方でも考えられますね。男気だ!って世の中が大騒ぎしているなかで、野球解説者の江本孟紀さんは『キキマス!』に来てかなり手厳しいことを言いました。黒田はいるかもしれないけれど他がいない、このままだとカープ危険だよって。それは、江本さんが野球解説者としてのミッションがあって発言しているわけです。その一方で、『週刊ベースボール』を読んでいたら、作家の北方謙三さんが黒田を大絶賛。黒田ほど分かりやすく男気というものを示した人はいない、子供たちに男気を教えたって、正反対なことを言っている。それが、北方さんの作家としてのミッションなんです。
今、映画『セッション』について議論が起きていますが、これについても同じことが言えるでしょ。ジャズミュージシャンの菊地成孔さんに、映画評論家の町山智浩さんが反応してて、意見がぶつかり合っています。それも、それぞれがミッション、役割に基づいて、映画を見ているからなんです。
プロ野球にしても、映画にしても、他のことにしても、それぞれにミッションがあり、役割に基づいてやってるって理解したほうがいいよって思います。それぞれの考え方に心酔している人たちが、「正しい」を一個にして、その「正しい」で裁こうとすることこそが、危険だと思うから。でも一番悪いのは、論争を読んで「じゃあ、行かない。見に行かない」ってなっちゃうパターンだけどね。