「弱さこそが人間らしさかも知れない」―映画『闇金ドッグス』主演・山田裕貴
海賊戦隊ゴーカイジャーで俳優デビュー、その後も人気ドラマGTOなどの出演を経て、2014年には映画『ライヴ』で映画初主演を果たすと、次々と大ヒット映画『ホットロード』や『ストロボ・エッジ』に出演している山田裕貴。現在、TBS系連続ドラマ『ホテルコンシェルジュ』に出演する中、8月1日には、主演映画『闇金ドッグス』も公開。これまでにない、ワイルドでダークな男を演じる。
「今回の安藤忠臣という役は、3作品目なんです。『ガチバン ULTRAMAX』と『ガチバン NEW GENERATION2』という“ガチバン”シリーズで、ついに今回主人公になりました(笑)。前作品では、ヤクザの下っ端を経て、自分の慕っていた兄貴分を拳銃で撃ち若頭補佐に昇進し、組長にまで上り詰めるというストーリーだったんですが、今度はいきなり自分が打ちのめされて闇金の取り立てをやることに。組長だったのはほんのちょっとだったので、本音を言うと、組長の期間をもっと楽しみたかった(笑)」
3作品目ということで、役に対する思い入れも深い。
「めちゃくちゃ愛着あります。これからもこの役をやっていきたいし、一緒に成長していきたい。これまで演じてきた中で一番好きな人間かも知れません。悪の道に進んでいることはさておき、自分の信念を曲げないところとか、逃げないところ、そして絶対くじけないところにすごく好感が持てます。実際、この役をやるといつも、本当の自分はこっちなんじゃないかと思う時がある。すごく明るい部分もあるけど、ちょっと無理して頑張っているなと感じるところがあるので…。それに安藤は1度ヤクザの世界に足を踏み入れてしまったため、もう堅気の世界には戻れないという覚悟がある。この道で自分は生きていくしかないと思い知らされることが何度もあって、それでも這いつくばっても生きていこうというキャラクター像にブレがないので、とても入りやすい役でもありますね」
闇金を取り立てる山田も怖いが、借金から抜け出せずに、人生が崩壊していくほかの登場人物もかなりパンチがきいているが。
「この作品の良さはそこだと思うんですよね。今はすごくきれいなものが多いけど、それは時としてつまらなかったりもする。汚かったり、弱かったりする人間が一生懸命に生きているから、人生は面白いんじゃないでしょうか。曲がった精神や、歪んだ愛情により、人間はこんなにも変わってしまうのか。そこが人間の弱さでもあるし、それこそが人間らしさかもしれない。追い詰められていく人間の姿に、何か本質的なものがある気がします。あと、闇金に手を出すと忠臣みたいなやつに会うぞという警告も受け取っていただければ(笑)」
今回の作品で、印象に残るシーンは。
「前の作品でも絡んでいる子分に裏切られるシーンがあるんです。銃を突きつけられて、本当に殺される寸前までいった時に、そんなつもりはなかったのに、自然と涙が出てきた。忠臣は泣かないキャラだと思い、監督に謝ったら、そこはそれでいいと。台本には涙するということは書かれていなかったけど、自分が唯一信頼して心を開いていた人間に、実ははめられていて、最後殺されかけた時に、スッゲー悔しくなってきて、それで自然に涙が出てきた。その時に、フタをしちゃダメだなって思いました。自分で心の中に壁を作るとか、この役はクールだから涙を流さないとか、かたくなに決めて感情にフタをするのは果たして正解なのかと。今回の体験で、クールで冷徹なやつでも泣くかも知れないと思いましたし、実際、自然に涙が出てたので、役に入り込むとそういうことがあってもいいのかなと思いました。あと見所は僕は普段あまりスーツを着ないので、ぜひスーツ姿を見てほしい (笑)。この役でしか着ないので、非常にレアな僕を見ることができます。思い入れもとっても強い役ですし、僕の演技の幅を広げてくれているのはこの忠臣という役だと思うので、明るい僕しか見たことがない人には絶対見ていただきたい。そして衝撃を与えたいですね」
ラストシーンは“続く”という余韻が残っているように感じたのだが。
「僕もそう見えたんですけど…。ぜひ、お願いしたいです(笑)」
「闇金ドッグス」8月1日(土)新宿武蔵野館他、全国順次公開中