池田鉄洋 表現・さわやか新作公演は鈴木砂羽、かもめんたるをゲストに恋愛コント!?
俳優として、舞台、映像とジャンルを問わない活躍を見せるかたわら、作家・演出家としても着々と実績を重ねる池田鉄洋(通称イケテツ)。彼の原点ともいえる苦笑系コントユニット「表現・さわやか」の新作公演『TanPenChu−♥』が9月に上演される。
チラシには「番外恋愛公演」とうたっている。
「最初はコント色を抜いた、ガチな恋愛劇をやるつもりでした。いつもの表現・さわやかを期待して来られると、“コントじゃないじゃないか”って思われるかもしれないと思って“番外”にしたんです。それで今回は鈴木砂羽さん、梅舟惟永さん、浅野千鶴さんをお呼びしてちゃんとお芝居をしようと思っていたんですが、砂羽さんがすごくコントをやりたかったみたいなんです。この前会った時も“コントだ!コントだ!”って言っていましたから(笑)。うちに出るということは当然コントをやりたいと思っているわけだから、やっぱりある程度はコントをしよう、コントから逃げないでおこうと思いました。でもその一方でちゃんとした恋愛の話にしようとも思っています。まあ彼女たちが演じればコントでも必然的にちゃんとした芝居に見えるだろうから、我々はいつもどおりコントを面白く作ればいいのかな、と今は思っています」
このタイトルを見ると恋愛ネタの短編集ということ?
「もともとある俳優さんに頼まれて書き下ろした短編の脚本が2本あって、いつか自分でやりたいとは思っていました。その作品はその後に小説化して『ミックスサンドイッチ』という短編集に収録したんですが、今回はその中から何本かを芝居にしようと思っていました。ただすごいメンバーが集まってしまったので、それじゃもったいないし、そこからもう1段階2段階欲が出てきてしまい路線変更がありましたので、タイトルはあまり気にしないでください(笑)」
ゲストが豪華。まずは女優・鈴木砂羽。
「砂羽さんは否定するかもしれないけど、11年前の旗揚げ公演の打ち上げで“出たい〜”って言ってきたんです。でもさわやかに出てもらってもそんなにギャラも出せないですから“いや無理だよ”って。そんなやりとりが打ち上げのたびにあって、それじゃあ、ということで昨年に僕が作・演出をした『BACK STAGE』に出てもらったんです。そうしたら思った以上に楽しんでくれて、仲間意識も深まった。それで前回公演で1日だけゲスト出演してもらったんですが、その時にまた砂羽さんに“いつになったらさわやかに出してくれるの”と言われまして、カーテンコールのときに“じゃあ出てください。マネジャーさんいいですか?” “いいですよ”ということで交渉成立となったんです」
そしてかもめんたる。
「実はコントをやっていながら芸人さんたちとのお付き合いが全然ないんです。逃げているところもありましたので、少し勉強させてもらいたいなという気持ちで、ファンだったかもめんたるさんにダメもとでオファーしてみたら出ていただけることになりました。コントの王者にコントユニットに来てもらうというよく分かんない話なんですが(笑)。今回はお二人と“仲良く”という感じにはならないと思います。ぶつかるというわけではないですよ。ふたりと一緒に突き詰めていく時間を作らないといけないなっていう感じ。いや、どんな気持ちでこちらに参加していただけるのかはさっぱり分からないんですけど(笑)」
チラシを見ると槙尾ユウスケが女装している。
「僕か槙尾さんのどっちが女装しようかと迷っていたんですが、槙尾さんのほうが可愛いんで、槙尾さんになると思います。チョイ役で僕も女装はします。話は5人の女の人たちが入れ代わり立ち代わりで出てくる短編をいくつか…10本くらいかな。それがオムニバスの形式で最後に収束していくものになると思います。一本一本、ワンキャラクターではねた作品にして、いつものさわやかを期待して来ていただいてもちゃんと面白いと思えるものにします。僕は砂羽さんと組んでひとつの話をやりたいと思っています。今年6月に『GO WEST』という作品で作・演出・出演をさせていただいたんですが、出番が少なかった。いや、これは自分でそうしたんですが、最近、役者のほうがおろそかになっている気がするので、今回はちゃんと出ます。男として恋愛ものをしっかりとやります」
梅舟と浅野との出会いは。
「梅舟さんとは映画『マエストロ!』の撮影現場でお会いしました。舞台は見たことがなかったんですが、知り合ってから2本見まして、不思議でポップな印象を受けました。会ったことのないタイプの人でした。浅野さんは彼女の所属する劇団の味わい堂々を見て“こいつら面白いな”と思いました。先日、拙者ムニエルにも出ていたんですが、“先を越された”と思いました」
前回公演からの1年の間にメンバーが大きく変わった。
「劇団って10年目って必ず何かが起こるんです。以前在籍していた猫のホテルも作風が変わって社会派の作品をやるようになったのが10年目だった。バカなことばかりやっていた僕みたいな奴が“これからどうするんだ?”って始めたのがさわやかなんです。同じようにさわやかも10年経ちました。このまんまなんとなく続けていくこともできたんですが、それはあまり良くない。だんだん劇団員が不満を口に出してギスギスし出す時期でもある。そうなる前に“取りあえず解散。もう一回やりたい人は集まってください”って話をした結果、今の形になりました」
次の10年ってどんな10年?
「毎回、僕にとってはものすごくおもしろいことをやっているのに、東京では駅前劇場、大阪ではHEP HALLでやっておしまいというのは、いつも“もったいないな”って思っていました。やり方を間違っていた。それに我々周辺の劇団は危機どころじゃない。サブカルでもなく、カッコ悪いジャンルとして忘れ去られていきそうな感じがある。我々は○○チルドレンといった看板もない。頭もいいわけではない。せめて多くの人に見てもらう方法をもう1回考えていかないといけない。その方法はいくらでもあると思うんです。幸いなことに、プロデュース公演の作・演出もコンスタントにやらせてもらえそうなんで、それはそれで広げていきたい。その間に、さわやかを広げていくにはどうしたらいいのかということをもう1回考え直していきたいですね」 (本紙・本吉英人)
【日時】9月5日(土)〜13日(日)【会場】赤坂RED/THEATER(赤坂見附)【料金】全席指定 前売り5800円、当日6100円/フレッシュ券(22歳以下対象)前売り・当日共に3000円(劇団のみ取扱い。詳細は劇団HP)【問い合わせ】表現・さわやか(TEL:070-5456-9283 [HP]http://h-sawayaka.com/)【作・演出】池田鉄洋【出演】鈴木砂羽/岩崎う大(かもめんたる)、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、梅舟惟永(ろりえ)、浅野千鶴(味わい堂々)/佐藤真弓、いけだしん、岩本靖輝、池田鉄洋