鈴木寛の「2020年への篤行録」 第27回 日本、東北が2030年の教育をリードする

 早いもので本コラムも今年は締めくくりとなります。私のほうは師走前と変わらず、大臣補佐官の業務と並行して大学で教鞭を取り、国内外のシンポジウムやセミナー等にお招きいただくという慌ただしい日々です。

 自分の中で2015年を総括するには、もう少し先になりそうですが、去る11月、嬉しいニュースが入ってきました。文部科学省の国立大学法人評価委員会が、全国の国立大学90法人の2014年の業務実績を評価した中で、福島大が全国4つの「特筆事例」として取り上げられる最高評価を得ました。

 評価理由は、「東北復幸祭〈環WA〉in PARIS」の企画運営。以前もご紹介しましたが、昨年8月末、被災地の中学・高校生たちが、世界中からの支援に感謝の意を伝え、東北の復興と魅力をアピールするとともに、彼らが主体的に取り組むことで日本や東北の未来を担う人材に育つように後押しするプロジェクトです。生徒たちは、OECDが復興教育で開催した「OECD東北スクール」に参加していたメンバー。福島大には事務局として、副学長の三浦浩喜先生以下、全学を挙げて取り組んでいただきました。イベントは2日間で15万人が来場する大盛況でした。評価委員会からは復興に向けた「戦略的・意欲的な情報発信」と高く評価いただきました。

 OECDでは、教育局が加盟各国の教育水準の向上や教育改革推進に取り組んでいます。私は副大臣時代から、東北の復興人材育成が、先方の考える「2030年代に向けた教育のモデル」になるように提案し、一緒にプロジェクトを進めてきました。この間の取り組みをともに支えていただいた福島大の受賞は我が事のように嬉しく思います。

 東北復幸祭の成功により、教育の世界的な先進モデルづくりに「日本は熱心だ」と、今後ますます世界に注目されそうです。コラム締め切り直後の12月10日には、文科省とOECD主宰の教育の未来像を考えるセミナー「Education 2030 – 21世紀コンピテンシー」が東京で開催され、私も登壇します。そういえば、今年の春は、慶應助教授時代の教え子が副校長として赴任した福島県立ふたば未来学園高校が開校し、復興教育の新しい1ページを開きました。来年で震災から5年。節目を迎える東北、そして日本から世界の教育をリードするモデルを打ち立てていきたいと思います。
(文部科学大臣補佐官、東大・慶応大教授)