中村倫也 × 佐々木希『星ガ丘ワンダーランド』
コメディーからシリアスまで映画、ドラマ、舞台問わず多彩なジャンルで幅広い役どころを演じ分ける俳優・中村倫也と、2008年の映画デビュー以来、着々と女優としてステップアップしている佐々木希。仲の良い“先輩後輩”である2人が、真っ向から気持ちをぶつけ合った!? 話題の感動作を語る。
改めて感じた俳優同士のリスペクト
20年前に去った母が、家族の思い出の場所で命を絶った。母は本当に自殺なのか。突然に母を失った兄弟と、突然に母がやってきた姉弟。美しい母の謎の死をきっかけに、2組の兄弟の人生が交錯していく…。
人気CMクリエイター柳沢翔が、豪華キャストを揃えオリジナル脚本で監督デビューを果たした注目作。物語の軸となる男女を演じた中村倫也と佐々木希は、ドラマ『土俵ガール』や映画『風俗行ったら人生変わったwww』など、過去に幾度か共演を経験。インタビューでも笑いが絶えず、良き役者仲間の先輩後輩といった様子。今回の共演でお互いに再発見したことは、と質問すると。
佐々木希(以下:佐々木)「中村さんは、尊敬する先輩なんです。これまで3〜4回ほど一緒にお仕事をさせて頂いているのですが、今回共演して改めて、その集中力や撮影現場に臨む姿勢に尊敬を抱きました。お芝居に関して話し合うことは特に無かったんですけど、中村さんが常に良い空気感を作ってくださっていたので、とても助けられました。中村さんは集中するところはしっかり集中して、それ以外のときは砕けた感じで気さくに話しかけてくださるので(笑)、私も中村さんを見習おう、と思っていました」
一方、先輩・中村が思っていたこととは…。
中村倫也(以下:中村)「きれいな顔してるなぁ、と思っていました。きれいな顔しているいい子だな、と(笑)」
佐々木「いい子ですか(笑)」
中村「これまで、佐々木はキラキラした役を演じることが多いというイメージがあったんですけど。共演した作品でもそういう役どころが多かったと思うし」
佐々木「そういえばそうですね」
中村「でも今回演じた七海は、感情を押しこめて生きているというか、少し幸うすい感じの女性。きっと男運悪いんだろうな、身勝手な男と付き合ってきたんだろうなと思わせる役どころで(笑)、佐々木はそういう役もハマるんだな、というのが新たな発見でした」
今回2人が演じたのは、とある数奇な絆でつながった義兄妹。中村演じる主人公・温人(はると)は、幼いころ母・爽子が突然、去っていったという過去を引きずりながら生きてきた青年。幼き日、去り際に母が落とした赤い手袋の思い出ゆえか、温人は駅に届けられる落し物を、ただの“モノ”と割り切ることができない。落とし主を想像して似顔絵を描いてみたり、落とし主が現れたビニール傘をごみ処理場にまで探しに行ったり。
中村「温人は、体は大きくなっているけど、心のどこかが成長できていない、時計の針が止まったまま生きてきた青年だと思います。きっと、波風が立つことを好まずマイペースに生きてきたんじゃないかな。心の中で、家族というものに対するあきらめなのか憤りなのか、いろいろ抱えて生きてきたけど、それに対して真正面から向き合い、解決しようとしてこなかったんですよね」
そんな温人の中で止まった時は、思いもよらない知らせで動き出す。
中村「温人は、この物語の始まりでもある母の死をきっかけに、自分の生い立ちの、コンプレックスとなっている部分を追い求めていく。その過程で、母の再婚先の姉弟である七海と雄哉、ごみ処理場で働く楠らと出会い、ときにぶつかり合ううちに、やっと時計の秒針がカチッと動く。これは、その瞬間を切り取った映画なんだと思います。」
佐々木が演じた七海は、その爽子が父との再婚により母となったものの、血のつながりが無い事実に悩みながら生きてきた女性。爽子の自殺に苦悩する父や弟の前では明るく振る舞い続けているが、爽子の実の息子、温人と出会い…。
佐々木「七海は、自分は姉だからということもあってか思っていることをあまり口に出さないんです。母とのことも、本当の家族になりたいと思っているのに心のどこかで自分は実の娘ではないという思いを抱えているんですよね」
中村「七海も、コンプレックスを強く抱えている女性だよね」
佐々木「言動から、ずっと抱え込んでいるんだな、と感じますね。でもそんな思いも言えないで、笑顔を見せたりしている。それがすごく健気なんですけど、演じていて私もとても苦しかったです。だから、七海が温人と語り合う場面では、報われて良かったなと思いました」
幼いころに爽子が作ってくれたリンゴスープの思い出を共有した温人と七海は、いつしか互いの心をさらけ出していく。“先輩後輩”の2人が真っ向から芝居の情熱をぶつけ合い、感動的なシーンを作り上げた。
佐々木「2人で感情を出し合ったあの場面は、やっぱり一番印象に残っていますね」
中村「リンゴスープを飲んだ帰り道のシーンね」
佐々木「ずっと我慢して生きてきた七海が初めて、自分の気持ちをきちんと言えた場面でもあるし。物語の順番通りの撮影というわけではなかったんですけど、撮影が終わりのほうでしたので、気持ちも十分に高めることができたのでありがたかったです。ただ、ものすごく寒かったんですよ(笑)。氷点下だったんですよね。寒すぎて口が開かなくて、焦りました(笑)」
中村「雪は降ってなかったけど、寒かったよね。ちょっと鼻炎っぽくなってたもんね」
佐々木「そうなんです。鼻がぐずついちゃって」
中村「佐々木は、ハナミズもきれいなんですよ」
佐々木「そんなはずないでしょ(笑)」