中村倫也 × 佐々木希『星ガ丘ワンダーランド』
“いろいろな家族のかたち”に2人は…
自らの本当の気持ちに気付いた2人は、すれ違っていた実の兄弟とも向き合おうとする。
中村「もともと僕は家族の物語がけっこう好きなんです。僕にとって家族とは、切っても切れないもの。血脈というのは、この世で唯一、絶ちきれないものなんじゃないかな、と思います。僕はごく普通の温かな家庭で育ちましたけど、世間にはいろいろな家族の形があって、どんな形であれ血のつながりというのは、ルーツとしても人間形成のうえでも、そこにあるもの。父母が出会わなかったら自分は存在しないわけですから。今回、そんなことも考えながら演じていましたね」
佐々木「血のつながりのある無しが、これほど愛や憎しみを生むことがあるんだなと思いましたね。七海の場合は、母親と血がつながっていないということに縛られて、自分は本当の家族じゃないんだとずっと思い続けてしまっていた。もちろん血のつながりは大事だと思うのと同時に、家族の絆はそれだけじゃない、と私は思うんです」
母の死をきっかけに、数奇な絆でつながった4人の子供たち。もつれ合った糸がほどけたときに明かされる、母の死の真実。すべてを知った温人は、この先どんな道を歩むのか。
中村「きっと温人はこれから、人に対してもっと優しくなれるんじゃないかな。温人は、演じていて“その後”が楽しみになるキャラクターでもありましたね」
佐々木「七海は、ちゃんと甘えられるような人になっていたらいいな。すでに、その兆候は表れていたので大丈夫だと思いますけど(笑)」
中村「そういえば、ほぼスッピンで演じてたんだよね」
佐々木「そうです、ほとんどメイクしていませんでした」
柳沢監督いわく、ノーメイクなのに佐々木が可愛らしく、困ってしまったとか…。
中村「口説かれたもんね、2人でリハーサルしようって…」
佐々木「口説かれてないです(笑)。そもそも監督は、そういうタイプと正反対の方なので、口説くとか想像できないですね(笑)」
中村、佐々木をはじめ爽子役の木村佳乃の他、新井浩文、菅田将暉、杏、市原隼人、松重豊という豪華な演技派たちが揃っているのも本作の見どころだが、そんな豪華俳優陣を率いたのが、長編映画初監督となる柳沢翔。CMの分野においては国内外で数々の受賞歴を誇る、若き名クリエイターだ。
佐々木「監督は普段、本当に控えめな方なんです。ただ、撮影に入る前お話させて頂いたとき、とても熱いものを持っている方だなと感じました。撮影中も度々、もの作りに対しての熱い思いが見える瞬間がありました。私も頑張って一緒に作品を作りたいと強く思いました」
中村「長編初監督だからこその意気込みみたいなものも感じました。並々ならぬ情熱と愛情というか。自分はこういう映画を撮りたいんだという一心が、すごく伝わってきました。柳沢監督の処女作となる本作の現場に立ち会えて本当によかったと思います。経験は、もちろん大事なんですけど、経験が錆になってしまう場合もあると思うんです。それがまったく無いのは、1作目しかないと思うんですよね。粗削りな分、輝きも乱反射するというか。それに、監督はアイデアも豊富な方で、人が興味を引く映画的手法、見せ方を全精力で持ち寄ってくれたので、ご一緒できて本当に楽しかったです」
佐々木「監督は、長編映画は初監督ですけどCMの世界で、いくつも賞をとっていらっしゃるんですよね。この作品に入る前、監督の撮った映像を拝見したんですけど、キラキラ輝いていて、今まで見たことの無い映像だったんです。こんな映像を作る方が映画を撮ったらどんな作品が出来上がるんだろう、というワクワク感がすごくありました。監督のそういった才能を、きっと皆さんも楽しんで頂けると思うんです。すごくユニークな撮り方をされることがあって、私自身完成作を見たときにどうやって撮ったんだろうと思うシーンも多くありました。車の中で雪が降るようなシーンとか…どうやって撮っていたんですか?」
中村「上のほうに雪を入れたビニールがあって、窓からカシャカシャ揺らして降らせてたんです。大変だったんですよ。旧式のクラウンだったんだけど、インキーしちゃって(笑)」
佐々木「へえ~。そういうアイデアも、初めてでしたし」
中村「実はアナログな方法で撮ってたんです(笑)」
佐々木「そうなんですよね。撮影方法はけっこうアナログっぽくて、手作り感があって(笑)。みんなで映画を撮っている感がありましたね」
中村「スタッフが若くても映画に対する愛情と情熱を持っていて、すごくいいチームでした」
佐々木「すばらしい現場に出会えたと思いました」
家族の別離と、悲劇によってもたらされた再会。見る者がそれぞれに、幼いころの思い出の日をよみがえらせる、切なくも温かい感動ミステリーだ。
(THL・秋吉布由子)
監督:柳沢翔 出演:中村倫也、新井浩文、佐々木希、菅田将暉、杏他/1時間57分/ファントム・フィルム配給/3月5日より全国公開
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