蓮舫氏は“謝ったら死ぬ病”にかかって墓穴を掘った ネットニュース編集者 中川淳一郎氏インタビュー
2009年に出版した『ウェブはバカと暇人のもの』で日本におけるウェブ、ひいてはウェブメディアの現状をばっさりとぶった切り、注目を浴びたネットニュース編集者の中川淳一郎氏。最近はさまざまなウェブメディアの編集に携わる一方で、雑誌や新聞で連載を持つなど枠にはまらない活動をしている。
中川氏は2010年からトークライブハウス、阿佐ヶ谷ロフトAでその年のネットニュースを集め、その中からMVPを決めるイベントを開催。その独自の視点で「ニュース」について語ってもらった。
まず中川さんがニュースを選ぶ時の基準、目の付けどころは?
「当たり前なものは選ばないということ。ネットでいえばアクセス数ばかりを意識するわけではなく切り口が重要。現在、NEWSポストセブンの編集をやっているのですが、このメディアらしいかどうかということには気をつけています。例えば、熱海の寛一お宮像が女性差別だという批判を浴びているという記事があったんですが、すごく重要な記事かといえばそうでもないですよね。でも“クソリベラルってどうよ……” みたいな感じでNEWSポストセブンらしい記事だったので選ぶというようなことですね」
阿佐ヶ谷ロフトAのイベントの場合は?
「あれの場合は私と山本一郎さんが壇上で盛り上がれるかどうかだけ。今回も1200本から210本くらいを選んで皆さんに見てもらいました」
では今年の一般的なネットニュースでは何がお勧め?
「SMAPですかね。SMAPについてはサイドストーリーがいっぱいあるんです。SMAPファン対電通というわけのわからない構図もあったりするんですよ」
サイドストーリーといえば、東京新聞の広告欄「TOKTOK」がSMAPへのメッセージで埋め尽くされたことがあった。巷では中川氏が仕掛け人という声もあるが…。
「SMAPの25周年を祝うために全面広告を出そうという動きがあったんですが、“ただ全面広告って高いよね。数千万円かかっちゃうよね。だったらこれを利用すれば”って東京新聞の3行広告欄を私がツイッターで紹介したんです。別に私が仕掛け人ではありません。ファンの自然発生的行動の結果ですよ」
SMAPファンvs電通というのは?
「SMAPファンの間では、“電通とジャニーズが組んでSMAPを潰した”という説が流布しているんです。そして先日、電通の女性社員が自殺した事件があったじゃないですか。それもあって“やっぱ電通は極悪非道だ!” って一部のSMAPファンは憤った。SMAPファンの中では、スポーツ新聞などが大抵ジャニーズ側についていたので“メディアは敵”という思いがあるんです。そんななか朝日新聞が投書欄に“SMAP解散反対”という投書を載せたら、“朝日はいい新聞だ”、9月8日に東京新聞が「TOKTOK」欄にメッセージを載せたら“東京新聞は理解してくれている”、私がAbemaTIMESにSMAPの記事を書いてヤフトピを取ったら“ここはちゃんと取材してくれてる”ってことになった。敵がいっぱいいるなか、一部信用できるメディアもあると認識してくださったようです」
一般的なニュースでは?
「えーとね(しばし黙考)。民進党の蓮舫代表の二重国籍問題ですね。あれはリベラルかどうかという踏み絵を迫るかのようなものだった。ウェブを見ていると顕著なんですが、今って“リベラルですか? 保守ですか?” という二者択一を迫られる状況になっているので、蓮舫氏を許すか許さないかというときに、判断が鈍るんです。ちょっとでも批判すると、“お前はクソ右翼だ!”ってなる。逆に支持すると、“左翼だ!”ってなる。異常なんです」
蓮舫氏については最初に謝罪していればこんなことにはならなかったのでは?という意見もある。
「そう。テヘペロで良かったんですよ。いろんな失敗がありますが、テヘペロで済むところを意固地になって、“謝ったら死ぬ病”にかかって墓穴を掘った」
謝ったら死ぬ病という面で言うと、蓮舫氏の場合は謝るとネトウヨとかから叩かれると思っちゃって頑張っちゃったのでは?
「だと思いますよ。民主党自体がネトウヨの呪縛にとらわれていますから。初動ミスだし、ネット上だと民進党は圧倒的に向かい風。その状況を理解しないと、ということですよね。その意味でいうと、重要だったのは実は民主党の毒舌ゆるキャラだった“民主くん”。民主くんはネトウヨと民主党及びリベラルの橋渡しをしていたんです。民進党になったせいで民主くんがいなくなって、そこをつなぐ奴がいなくなっちゃったんです」
成宮問題はしばらくくすぶる感じ?
「くすぶって、次にどうなるかというと、これから続々“俺は彼の性的嗜好は知っていた”と言う奴が出てきます。今回、すでに成宮君を利用し始めているリベラル系の人がいます。その人は成宮君を“ゲイであることをばらされた、差別に耐えるかわいそうな人”として利用し始めた。その人はこれまで清原とか高樹沙耶は擁護していない。成宮君だけ突然擁護し始めたというのは弱者憑依。これがインチキ左翼の化けの皮がはがれたと私が思うところなんです」
あと気になったニュースは。
「ここまでくるとバカなニュースということですね。私としては岡口裁判官ですね。ブリーフ裁判官(笑)。岡口さんには息子さんがいて、彼が最高なんです。高校生でバンドやっているんですが、岡口さんが叩かれた時に“親父と喋りました。元気だな、と言いました。親父が有名なうちに俺も”って自分のバンドの動画を張り付けているんです。岡口さんと息子の連係プレーが素晴らしい。それに2人とも全然悪いことはしていないし、裁判官だって血の通った人間だっていうことを知らしめたことはいいことだと思うんですよ。“家族のことを考えろ”という批判もあったと思うんですが、息子さんは親父のこと尊敬しています(笑)」
DeNAがやらかしました。キュレーションサイトはこれからどうなる?
「もう衰退しますね。今まで維持できていた理由が、状況を分かっていないクライアントが広告を入れていたからです。広告代理店も、“このサイトはすごいアクセス数でバイラルするんですよ!”といった売り文句で営業していましたが、今までネットメディアについては代理店の言いなりになっていたクライアントが“胡散臭いんじゃないの?”って気がつき始めて、もうちょっと精査しようということになってきました」
これからそれがなくなってウェブメディアもまともになっていく?
「なりますよ。そうしなくちゃまずい。だからこれからはおっさんライター、つまり真面目に取材をしているベテランが勝てる時代になるんじゃないかな、と思うんです。それで来年の2月1日に阿佐ヶ谷ロフトAでオバタカズユキ、神田憲行、松浦達也といった50代のライターを集めて“若いライターなんてだめじゃねえか。オッサンなめるな”という内容のイベントをやります。デザイナーとかイラストレーターって技術がなきゃできないじゃないですか。でもライターはバカでも誰でもできる職業になってしまった。コピペとか語尾をちょっと変えて、記事を書いたことにしている。この手のバカなライターを跳梁跋扈させたのがキュレーションメディアなので、私はこれからもそれをいじろうかと思っています」