格闘家イケメンファイル Vol.64 壊しのベビーフェイス 武居由樹(たけい・よしき)
昨年の12月、後楽園ホールで行われたKrush.71で、見事初防衛を果たした武居由樹。リング上では鋭い目つきで相手を追い詰めるハードパンチャーだが、その素顔は今年20歳になったばかりの気持ちの優しい青年。格闘技を始めたきっかけは…。
「小学校の高学年から足立区の竹ノ塚に住んでいるんですけど、その頃ちょっと悪い子で(笑)。それで母親が、10歳の時、僕をキックボクシングジムに入れました。最初は全然好きじゃなくて…。もともと運動もそんなに好きじゃなかったんです。みんなでやる体育とかは好きでしたが、一人で黙々と走ったりとか、筋トレをやったりとかが面白くなくて。だからやる気も起きないし練習もサボってばかり。でもそのジムの会長さんが、家まで来て無理やり家から僕を引っ張り出した(笑)。それでなんとか続けてこられました」
最初は嫌々通っていたジムだが、だんだんと格闘技にのめり込んでいく。
「中学生になってジュニアの大会に出るようになり、そこで優勝とかできるようになってから、好きになりました。その頃は“俺ってもしかして強いんじゃないか?”って勘違いが入っていましたね、今思うと(笑)」
しかし、すぐに挫折を味わうことに。
「プロデビューした後、2連敗したんです。それでちょっと、もしかして向いてないんじゃないかと。去年の初め頃だったんですけど、負けた西京選手も佐野選手も1個下なんです。年下の選手だから余計へこんじゃって、もう1回やって負けたら本当に辞めちゃおうとまで考えていました。でも、階級を下げたら、どんどん勝てるようになり、いつの間にか辞めるのを忘れていました(笑)」
そして、ついに初代Krush-53㎏王者になった。
「小学校4年生から始めて、10年目だったので、やっとチャンピオンになれたか…という思いでした。僕の通っていたジムは結構厳しくて、遊んじゃいけないとか制約も多く、しかも毎日練習があったので、ほんと“やっと”という感じですね。でもジュニアの頃から毎日練習してきたというのが自信につながり、それが強みになっていると思います」
そして初防衛戦。相手は1度対戦し勝っている隆聖選手。しかし、1Rにダウンを奪われてしまう。
「周りの応援もすごくプレッシャーでしたし、防衛しなきゃというのも大きかった。もちろん、その試合でメインイベントを任されたという責任もありました。なんだかんだいろいろ重なり緊張していたのかも知れません。相手は、以前対戦し勝った選手だったので、普通にやれば勝てるだろうという甘さもあった。1Rでダウンを取られ、ずっとダメージがあり、インターバルでやっと抜けたという感じでした。2Rは最低でも相手からダウンを取らなきゃと内心焦っていましたが3Rは、開き直って夢中で倒しにいきました。相手は、しっかりトレーニングしてきたのが分かりましたし、何より気持ちが強いと感じた。でも3Rで何とか倒し、防衛することができて良かったです」
試合後のマイクパフォーマンスでは、K-1参戦も直訴。
「やはり格闘技、キックボクシングをやっている以上、K-1は憧れの舞台です。実は1回、K-1のリングに立ったことがあるんですが、会場に飲み込まれちゃって…。そこで西京選手に負けてしまって、全然いい思い出がない。だからもう1回、あのリングに立って、今度はK-1の世界チャンピオンのベルトを取りたいと思っています。Krushのベルトはもちろんすごく大事なので2本持ちたい。そして誰も僕に勝てないんじゃないかって言われるような絶対王者になりたいんです」
貪欲にベルトを取りに行くと語る武居。嫌々始めた格闘技でここまで来るとは想像もしていなかった。
「あの頃は本当に将来の夢とかまったくなくて、悪さばかりしていた。そういう意味では格闘技がなければ、自分はどうなっていたか…。心から格闘技に出会えて良かったと思っています。格闘技は努力次第で強くなれるし、上に行けるスポーツ。礼儀や言葉遣いも覚えられるので、反抗期の少年におススメです(笑)。僕は小柄なほうですが、どんな相手だろうと真っ向勝負で倒しに行くのが自分のスタイル。そういう試合をお見せしますので、ぜひ1度会場に来て下さい」