根木慎志 × 伊藤達也 “社会が変わるってどういうこと?”ということを考えればワクワクするはず
行政から見た障がい者スポーツの普及、取り組みについてどういうお考えを。
伊藤「根木さんの活動のように実際に体験するというのは素晴らしい。そういうことを体験する場をしっかり後押しをしていくということが重要だと思います。特に車椅子バスケは健常者も障がい者も同じ土俵でできるスポーツなので、実際に車いすに乗って体験してもらうと、その中で違いを認め合うというか、どういう苦労があるのかということを感じる、ひとつの大きな場でもあると思うんです。あるいはリオの時に一番感心したのは車椅子バスケの試合においても、車いす卓球の試合においても、小中学生たちがたくさん応援に来ていた。これは恐らく国が相当配慮しているんだと思うんです。子どもたちがパラリンピックを観戦できるよう政府もしっかり取り組んでいきたいと思います」
パラリンピアンOBの根木さんから2020年に向けて要望などは?
根木「ロンドンでは38億人がテレビで見ていた。ということは2020年なんて、軽く40億人を超えると予想されています。開催地は世界中が注目している。その中で東京、日本からパラスポーツを通じて、共生社会を実現させないとダメ。世界のモデルになるようなものが2020年のパラリンピックなのかな、と思います。結果、それがみんなを楽しませたり、競技を成功させることでもあるのかなって思います。大きすぎますか(笑)?」
パラリンピックは日本にとってどうあるべき?
伊藤「リオで国際パラリンピック委員会の会長や役員の方にお会いしたんですが、東京大会に対する期待がものすごく大きいんです。それはお互いの違い、多様性というものを認め合って、ともに生きていく共生社会のさらに進んだ形が東京大会で見えてくるんじゃないか、パラリンピックそのもののステージが1段階上がるんじゃないかという期待なので、それをしっかり支えていきたいと思います」
日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長の目指す「パラリンピックを満員にする」ためには課題はまだまだある。まず競技を全部知ってもらわないといけない。パラスポーツとエンタメの融合なども観客増のためには大事なことですよね。
根木「大会を満員にするというのは…。恐らくみんなが注目しているし、盛り上がるのは間違いないと思うんです。パラリンピックが開催されると社会が変わるといわれていますが“社会が変わるってどういうこと?”ということを考えるとワクワクすると思うんです。会場に足を運ばないと分からないことっていっぱいあると思うんだけど、じゃあ2020年まで分からないのかといえばそんなことはない。2020年にいっぱいにするためじゃなくて、パラスポーツのすごさを感じて、2020年に成功させるためにどんなことをやっていけばいいのかというように考えていけば、たくさんいろいろな案が出てくるんじゃないかと思う。例えば、小学生だからこそできるパラリンピックの応援の仕方なんかもあるような気がするんですよね。そんなこともいっぱいやっていけばいいと思う」
行政側は一体になって進んでいかないといけない。本部長代理としては?
伊藤「2020年は日本が大きく変わるきっかけにしないといけない。前回の東京大会は1964年。戦後の焼け野原からわずか20年でオリンピック・パラリンピックを実現した。新幹線まで通して世界に経済復興をアピールした。2020年は共生社会のあり方として、日本や地域がどう変わるのかということが世界から問われている。これをしっかり発信していかないといけない。日常の中で、障がい者スポーツを感じられる場面が必要だし、学校教育の中でも、企業においても考えていかなければいけない。そのために政治や行政は一生懸命知恵を出して場をつくり、関係性を構築していくことだと思います」
東京だけでなく全国各地にオリンピック・パラリンピックを盛り上げようというリーダーたちもいる。「beyond2020」というものを作って盛り上げていこうという動きが出ている。
伊藤「オリンピックやパラリンピックに向けて、それぞれの地域が具体的にどういうレガシーを未来に残し、どういう地域社会を目指していくのか。それを見据えて動き出すきっかけにすることが重要だ。関係者だけの祭典ではいけない。Beyond 2020の世界をどうつくるかという思いがなければ、2020年のあと日本はただ衰退するだけになってしまう。素晴らしいイベントをやったけど、それで終わりになりかねないという危機意識がある。オールジャパンで取り組み、みんなが参加し、日本が盛り上がる東京大会にしたいと思っています」