逃げ続けることが、人生だった。『罪の声』【著者】塩田武士
グリコ・森永事件をフィクションで描いた『罪の声』。多くの謎を残し終焉した昭和最大の未解決事件「グリコ・森永事件」を題材に物語は展開。2人の男による、ある意味執念の捜査により明らかになった事件の真相とそれに関わった人々の苦悩が綴られた長編小説だ。
「ギンガ萬堂事件」?その第一幕は社長の誘拐から始まった。その後、商品の菓子に毒物を仕込み企業を脅迫、身代金を請求するという、前代未聞の事件が世間をにぎわせた。それから31年後、新聞社の文化部の記者・阿久津は年末企画の“昭和・平成の未解決事件”という特集で、その「ギン萬」事件を担当することに。時効が成立し、証言者たちの記憶も大分薄れている事から、事件の真相に迫る調査は難航するが、“今だから言える”という真実の証言を得て、じわじわとその真相に迫っていく。同じころ、この事件を調べ始めたもう一人の男、京都でテーラーを営む曽根俊也。企業への身代金取引の電話には子どもの声が使われていたのだが、母の部屋で偶然見つけたカセットテープに、事件に使用されたと思われる脅迫文を読む子どもの声が録音されていた。しかも、その声は紛れもなく幼い頃の自分…。果たして、俊也の死んだ父親は事件に関係していたのか? さらに、自分以外の子供の声は一体どこの子供なのか? また、阿久津は事件の真相にたどり着けるのか? 事件の裏に隠された悲しい真実。そこには事件をきっかけに人生を翻弄された普通の人々がいた!?
誰もが知る有名な事件を推理し、その事件に関わった人たちの波乱の人生を大胆予想した、エンターテインメントフィクション。