中村勘九郎×中村七之助×蓬莱竜太 赤坂の街を華やかに彩る「赤坂大歌舞伎」、今年は新作に初挑戦!
勘九郎(以下、勘)「最初ではなく、ずっと飲み屋話です(笑)。蓬莱さんが歌舞伎を見に来て下さったり、僕が蓬莱さんの芝居を見に行ったりした後に飲みに行くことが何度かありまして、その時にぜひいつか歌舞伎を書いてほしいといつも話していました。というのは、うちの父が生前、野田(秀樹)さんや(渡辺)えりさん、あとちょっと上ではありますが、串田(和美)さんと一緒に仕事をして、多くの作品を作ったんです。その時に、“生きている同世代の作家と出会ったことを俺は誇りに思う。お前たちも、そんな人を見つけられたらいいね”ということをよく言っていた。そんな事もあり、いつか蓬莱さんに新作歌舞伎を書いてほしいとずっと思っていたんです」
蓬莱(以下、蓬)「今、こうしてお話をしていても、大変なところに来てしまったなという思いでいっぱいです(笑)。普段小さな劇場でこまごまと芝居を手作りで作っている身としては、まさか歌舞伎を書くことになるとは思ってもみなかった。これまでも勘九郎さんから、新作歌舞伎を書いてほしいと、飲み屋で言われてきましたが、まさか本気だったとは(笑)。その時、簡単にいいよ、いいよって言っていたことを今、後悔しています(笑)。しかし、その反面、とても名誉な仕事だと思っておりますし、自分の持てるすべての力を発揮して、勘九郎さん、七之助さんにぶつかっていきたいと思っています」
七之助(以下、七)「赤坂大歌舞伎の打ち上げの席で、次は新作をやりたいねという話は冗談半分、本気半分で言っていたんです。それで5回目の今年の話になった時、またそんな話をしていたら兄がすぐ動いて、今回の舞台が実現することになった。なんでも言ってみるものだなと思いました(笑)」
勘「今年も赤坂大歌舞伎ができるという喜びにプラスして、今回は蓬莱さんに新作を書いていただけるということで、喜びのほうが大きいです。前回(2015年)の公演後にお願いしたんですけど、それって企画としては遅いんですよ。普通は2年前にお願いしてやっていただくなんて無理なんですけど、本当に快く(笑)引き受けて下さって、実現にこぎつけることができ、とても感謝しています」
蓬「プレッシャーです(笑)。僕の普段の芝居は歌舞伎からかなり縁遠いと勝手にイメージを持っていましたし、野田さんとかそういう偉い方とはまた違うのに…とは思いましたが、それが逆にどう融合するのかなって。それが楽しみで、チャレンジしたいなって思ったんですよね」
七「脚本を読ませていただきましたが、非常に素晴らしいものなので、逆にこちらが稽古でいいものを作らなければという気持ちです。心構えは古典も新作も変わりないんですけど、新作のすごいところは稽古でどんどん楽しさや快感が生み出されるところ。それは新作ならではだと思います。とにかく、役者が一生懸命にやらないとこの作品をダメにしてしまうというぐらい、役者が頑張らないといけない作品なので非常に楽しみですし、同じ方向を向いて一生懸命稽古をしたいと思います」
蓬「自分はただただ戦力になりたいと思いますし、ある意味よく知らない世界に入り込んでいくような立場なので、そこで何を得られるのか僕自身も楽しみです。逆に演劇ばかりやってきたから考えられることもある。そういう融合やセッションがいい形になればいいと思うし、いい形にするのが仕事だと思っています。勘九郎さんも歌舞伎を意識して書かなくていいし、好きに書いて下さいとおっしゃって下さった。あくまでも自由にという事でしたので、普段自分がやっている作品と同じく、自分の中にある人間に対する興味や、テーマ性をそのまま歌舞伎の世界で踏襲してみようと思いました」