中村勘九郎×中村七之助×蓬莱竜太 赤坂の街を華やかに彩る「赤坂大歌舞伎」、今年は新作に初挑戦!
今回の作品では、勘九郎が何度も生まれ変わる男を演じる。
蓬「勘九郎さん演じる太郎が、七之助さん演じる歌という女性を愛し、夫婦となり歌を幸せにしようと頑張るんですが、それがうまくいかず転生し、また子どもの頃から太郎を始めるんです。その時には1回目の失敗を記憶しているので、次は違う太郎となり、歌を幸せにしようとするが、これもうまくいかない。結局違う人間になっても、また違う問題が起きたり、そこにまつわる人間関係が破綻したりする中で起こる人間ドラマです。着想の原点には、勘九郎さんのいろんな顔を皆さんに見てほしいというところもあります。一役はもったいないけど、別の人物ではなく、同じ人物を何回かのパターンで見せていくというところに、一粒で何度もおいしいみたいな(笑)。それぞれの太郎に対して七之助さんがどう接していくのかというところも歌舞伎ファンが一番見たいところじゃないでしょうか」
勘「脚本を読んで大変だろうなと思いました。違う人物で何役というわけではないので、とても難しいでしょうね。同じ人物でいろいろな顔を見せるので、単に声色を変えてみてというのではなく、きちんとそれぞれの人間を作り上げていかなければならない。ただ、転生していく中で、どの太郎にも自分がいるんですよ。それは、男性、女性を問わずお客様にも感じていただけると思います。恋をしたことがない人はいないと思うので、誰しもが思い当たる節があると思う。それを言ったらダメになるNGワードとか、日常の恐怖が散りばめられている(笑)。読んでいてもグサグサきますし、恋愛のあるあるも多いけど、それだけではなく、人を愛する苦しみなどが伝わればと思います」
七「太郎は人格がいろいろ変わりますが、歌を愛するというか幸せにするという一本の芯がある。男性はそれぞれの太郎を誰でも持っているけど、それを自分の中の理性で制御して生きている。これを表現する兄は大変だなと(笑)。そんな太郎に愛される歌は魅力的な女性であることは間違いないんですけど、かといってすべてがパーフェクトな女性ではない。ちょっと欠落しているところもあり、陰があるんですけど、そこが魅力になっている。太郎とうまくいかない理由の一つには、太郎自身も悪いところは多々あるんですけど、歌も悪いんですよね。少なくともいい人ではない。決して悲劇のヒロインではないけど、幸せが何かを分かっているようで分かっていないところがつかみどころがなく、魅力になっているのだと思います。僕自身、歌みたいな女性が現れたら、引っかかるかもしれないですね(笑)」