時が経って感じ方が変わるものもあれば不変のものもある かさなる視点—日本戯曲の力— Vol. 2『城塞』
新国立劇場ではシリーズ「かさなる視点?日本戯曲の力?」と銘打ち、今年3月から、昭和30年代に執筆された日本戯曲の3つの名作を30代の気鋭の演出家によって上演している。今回はその第2弾。安部公房の『城塞』を上村聡史が演出する。
同作は戦後17年が経った1962年に書かれたもので、戦争によって富を築いたブルジョア階級の責任を問う安部公房の痛烈な視点が際立つ作品。
舞台は敗戦から17年後のある富裕層の邸。そこに住む男、その父、男の妻、家に仕える従僕、そして男に雇われた若い女による不可思議な“ごっこ”が繰り広げられていた。彼らは敗戦の記憶を持ちながらそれぞれの立場からの利己的な主張をぶつけ合うのだが、それによって、彼らのバランスが危うい状況へと変化していくのだった。
ここで語られる特権階級意識や戦争観、愛国心といったものが過去のものととらえられるのか、もしくは身近な感覚としてとらえられるのか…。見る者の“感度”が試されることになる。
ちなみにこの「かさなる視点?日本戯曲の力?」では3月に谷賢一が三島由紀夫の『白蟻の巣』(公演は終了)、5月には小川絵梨子が田中千禾夫の『マリアの首 ?幻に長崎を想う曲?』を演出。5月13日には3人の演出家と同劇場の芸術監督を務める宮田慶子氏によるシリーズを振り返るトークセッションを新国立劇場にて開催する。
【日時】4月13日(木)?30日(日)(開演は13時。※13・14・21・28日は19時開演。22・29日は18時の回あり。月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】新国立劇場 小劇場(初台)【料金】A席6480円、B席3240円、Z席1620円(Z席は公演当日、ボックスオフィスのみでの販売。1人1枚、電話予約不可)【問い合わせ】新国立劇場ボックスオフィス(TEL:03-5352-9999=10?18時 [HP] http://www.nntt.jac.go.jp/ )【作】安部公房【演出】上村聡史【出演】山西惇、椿真由美、松岡依都美、たかお鷹、辻萬長