時報と同時に樋口高顕候補が当確!ドン瞬殺

これは22時以前の風景。結局ボードは緑のバラで埋め尽くされた(撮影・小黒冴夏)

 7月2日に投開票された今年の都議選は都民ファーストの会(以下都民ファ)の圧勝に終わった。

 都内のホテルに設けられた都民ファの開票センターに20時からの開票に備え小池百合子代表と野田数幹事長が19時57分に姿を現すと会場にすし詰めとなったカメラマンから一斉にまばゆいばかりのフラッシュがたかれる。席に座り用意されたモニターを見つめる両氏。20時前、一時の静寂。しかしその静寂も本当に一瞬のものだった。20時になると一斉に都民ファの候補者たちの当選確実が流れ出し怒涛の“花つけ”ラッシュが始まった。

予想以上の結果にがっくりの下村氏(写真:Motoo Naka/アフロ)

 一人目は千代田区の樋口高顕候補。いわずと知れた自民党の重鎮、内田茂都議の地盤だ。今回の都議選で内田氏は後継者として新人、中村彩氏(27)を擁立。小池氏との“代理戦争”の構図が注目されたが小池氏が瞬殺した。

 都民ファの勢いが止まらない??のはもう分かった。それより驚かされたのが自民になかなか当確者が現れないこと。共産、社民に当確が先に出て、なおしばらくも自民が「0」という状況を誰が予想しただろうか。

 2日夜、党本部(東京都千代田区)に設置された開票センターに投票が締め切られた午後8時すぎに硬い表情で姿を現した党都連の下村博文会長は「予想以上に厳しい結果になってしまった」と力なく語った。

 今後については「しっかりと自民党は反省し、後に引きずらないようにする必要がある。国民にも理解してもらわなければならない」。選挙戦を通じ豊洲市場(江東区)移転問題や2020年東京五輪・パラリンピック問題をめぐる小池氏の意思決定過程を批判したが、「残念ながら都民に伝わらなかった」と敗因を分析した。

 自民と袂を分かち都民ファとの連携を前面に都議選を戦った公明党は全員当選の23議席を獲得。公明党都本部の高木陽介代表は2日夜、東京都新宿区の党本部で報道陣に「小池都政が誕生し、改革を進めてもらいたいという都民の思いが今回の選挙に出た」と述べた。

 自民と連立を組む国政への影響については「一貫して都政は都政、国政は国政と捉えてきた。国政には影響を与えないようにしていきたい」と語った。

 共産党は改選前の17議席を19に増やした。志位和夫委員長は3日午前0時すぎから東京・代々木の党本部で会見し、「都民ファーストの会という新しいグループが大規模で誕生する難しい条件での戦いだったが、重要な躍進を勝ち取った。大きな勝利だ」と述べた。

 歴史的大敗となった自民党に対しては「一連の国政の私物化という問題、国会運営の横暴な姿勢に対して(有権者が)ノーを突きつけた」「結果を厳粛に受け止め、憲法9条の改悪をやめるべきだ」と主張した。

 選挙前に都民ファへ鞍替えする議員が続出した民主党は7から5。松原仁都連会長が午後11時すぎから党本部(千代田区)で記者会見を開き、「解党的な出直しをしていかなければいけない」と厳しい表情で振り返った。その一方、「当初言われていた数字よりは踏みとどまった」と安堵感もにじませた。

安倍晋三首相が街頭演説をする秋葉原の会場に突然姿を見せた森友学園の籠池泰典前理事長。会場はパニックに陥り、籠池氏は警察やSPに排除される(写真:日刊現代/アフロ)

告示前後から問題起こりすぎの自民党

 歴史的惨敗を喫した自民党だが、6月22日の告示前後から、思いもかけない出来事が頻発。強烈な逆風の中での選挙戦となったことは否めない。

 まずは秘書への暴行で22日に自民党に離党届を提出した豊田真由子衆院議員=埼玉4区=。22日に「週刊新潮」が豊田氏が50代の男性秘書の運転する自動車の後部座席に座り「この、ハゲーっ!」などと大声でののしり、頭部を数回殴ったという音声をインターネット上に公開。執行部は23日告示の東京都議選を控え、早期に離党届を提出させて幕引きを図ったが、あの音声は強烈すぎた。

 27日には稲田朋美防衛相が板橋区で開かれた自民党候補を応援する集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としても、お願いしたいと思っているところだ」と訴える。これについては自衛隊の政治利用と取られかねない発言だとして野党は辞任を要求。政府・与党からも問題視する声が出たほど。稲田氏は同日、発言を撤回し、30日の会見で釈明したが、今度はここで「誤解」という単語を35回も繰り返したことがネタにされるなど泥沼に。

 29日には週刊文春が元文部科学相で自民党の下村博文幹事長代行を支援する政治団体「博友会」の内部文書に、学校法人「加計学園」(岡山市)から200万円の政治献金を受けたとの記載がありながら、政治資金収支報告書には記載されていなかったと報じた。下村氏は同日会見し「加計学園から寄付もパーティー券の購入もしてもらったことはない。全く事実に反する」と否定した。

 最終日の7月2日には満を持して安倍晋三首相が秋葉原で応援演説に立ったのだが、市民団体などから「安倍辞めろ」コールが起き、安倍氏もこれに呼応。「人の演説を邪魔するような行為を自民党は絶対にしない。こういう人たちに負けるわけにはいかない」と発言。ここには森友学園の籠池泰典前理事長も現れヤジを飛ばすなどしたことからメディアに大きく取り上げられ、投票日前日に大きなダメージとなった。