今までで一番ひどいセクハラ【田口桃子の「死ぬまでモテたい」 第3回】

サイト内で使う写真撮影のために会社のデスクでアダルトグッズを広げる私こそ、セクハラしているのかもしれません…

 …とタイトルで謳ってみてはいいけれど、全く思いつきません。

 そこまでセクハラで傷ついた経験がないですし、都合の悪いことはすぐに忘れたい性格なので覚えていないだけかもしれませんが。

 むしろ「お前こそ生きているだけでまわりに対してセクハラしている」と思われているんじゃないかという気がします。

 そんなわけで私には、忘れられないほど嫌なセクハラってないんですね。

 でも自分がなんとも思っていないだけで、まわりから見たらすごく嫌になったということがあったようなんです。

 先日、とある年上男性から、「女の価値は男の数で決まるんだからもっと遊べ!」というようなことを言われました。

 その人のキャラクター的に、そういうことはよく言うし、今まで私も私の周りの人も特にそれがひっかかるということはなく、だからそのときも私は「そうですか~勉強になります」と軽く流したんです。

 その人と私の間に構築した人間関係もあるので、私としても別に嫌な思いはしなかったのですが。

 ところが、その場に居合わせた女性が後から、「あんなセクハラ発言は許せない」と言っていたのです。

 私がそういった発言に慣れ過ぎてしまって、セクハラに鈍感になっていたのかもしれません。

 そういう発言が嫌だと思う人がいるということを忘れていました。

 結果的に彼女に不快な思いをさせてしまい、申し訳ないなと思いました。

 そして、彼女が嫌だったのはそのセクハラ発言だけではありませんでした。

 女性向けAVのサイトの運営をしながら、その発言を否定しなかった私へも怒りの感情を持ったそうです。

 そうした発言を問題視しないで流すことは、同じ場にいる女性もそのセクハラ発言を受け入れたことになると思われる可能性があると、彼女は考えたのです。

 こういう仕事をしているからこそ、セクハラに対して啓蒙していく言動をとるべきではないか、と彼女は激怒していました。

 私は性を扱った業界に10年以上身を置いているので、セクハラ的なことを言われる機会、される機会というのは、人の何十倍もありました。

 怒ったことも悔しくなったことも泣いたことも、何十回何百回とあります。

 人と比べられるものではありませんが、それでもセクハラについて考える機会は、とてつもなく多かったと思います。

 だからね、先のセクハラ発言に対して、なんとも思ってないわけじゃないんですよ。

 そのとき言われたことだって、全く心の響かなかったわけじゃないんですよ。

 私なりにこの十年考えた結果、「こんなくだらないセクハラをいちいち正すのは意味がない」から、この場は受け流したんですよ。

 多くのセクハラの根本にあるのは、「無神経な男性」と「神経質すぎる女性」だと私は思っています。

 言動で無神経に接してくる男性、皆さんも心当たりがあるのではないでしょうか。

「今日メイク濃いんじゃない?デートでもあるの?」みたいなこととか、あとはボディタッチとか、すぐイメージできますよね。

 神経質すぎる女性、はどうでしょうか?

 男性に卑下された、馬鹿にされた、と過敏に感じて怒るとか。

 いつか「かわいいね」「キレイだね」という言葉すらセクハラにされてしまって、人を褒めることもできなくなるんじゃないか、という勢いすら感じます。

 前述した彼女も、この「神経質すぎる女性」に当てはまると私は思っています。

 私が言いたいのは。

 私たちが本当に闘わなければいけないのは、そういう目の前のセクハラ発言なんかじゃないんです。

「無神経すぎる男性」や「神経質すぎる女性」にいちいち振り回されてしまう、自信のなさだと思います。

田口桃子(たぐち・ももこ)
GIRL'S CHプロデューサー。2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL'S CHの立ち上げに携わる。
以来現在まで、GIRL'S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。