ペアダンスという文化【田口桃子の「死ぬまでモテたい」 第8回】
私事ですが、ゴールデンウィークを利用して、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに行ってきました。
リオというとサンバカーニバルを思い浮かべる方が多いかと思いますが、ブラジルには特色ある音楽やダンスがたくさん存在し、サンバはその中の一部なんですね。
ブラジルがある南半球は今は秋で過ごしやすく、カーニバルも2月に終了し、今回はさまざまなジャンルのブラジル音楽・ダンスを体験できた10日間でした。
リオでは昼夜問わずダンスパーティーが開催されているのをよく目にします。
ライブハウス、ダンススタジオなどで開催され、幅広い年齢の男女が参加し、音楽にあわせて踊ります。
中にはプロやインストラクターのような人もいますが、ほとんどが一般の方です。
日本でも社交ダンスやサルサなどのペアダンスをされている方はいると思いますが、日常的に楽しむ文化はありません。
私自身もペアダンスのことはよく知らず、踊り方もわからず、リオでのこの風景を見てとても驚きました。
ほかのジャンルを知らないのであくまでブラジルでのペアダンス文化のことになりますが、ペアダンスは基本的に男女で組み、男性がリードをとります。
パーティーではほとんど切れ間なく曲が流れますが、男性から女性を誘い、一曲一緒に踊るのが一般的なようです。(楽しかったからもう一曲踊ろう、ということはありますが、どんなに相性が悪くても途中でやめることはないのだとか)
自分自身の性格もあって、つい私から誘いたくなってしまうのですが、そういうことはあんまりスマートではないみたいです。
リオの男性たちは女性に優しく、レディファースト。
パーティーでも積極的に声をかけてくれますし、断ったらちゃんと聞いてくれますし、一緒に踊るときはレベルにあわせてリードしてくれます。
ダンスだけでなく、電車でも席を譲ってくれたりするので、女性を尊重してくれる文化がとても素敵だなと思いました。
そんなわけで、ペアダンスの経験がほとんどない私でも、リオの素敵な男性たちにリードされて、楽しく踊ることができました。
ですが、最後の夜にパーティーで一緒に踊った男性が、ちょっとマナーの悪い方だったのです。
誘われて踊り始めた私ですが、彼のリードがちょっと難しく、うまく踊れませんでした。
すると、ため息をつかれたり舌打ちをされたり。
確かに私が踊れないせいで楽しめなかったかもしれませんが、一曲、たかだか五分くらい、そんな態度を控えてくれてもいいではないですか。
すっかり悲しくなってしまい、もう踊りたくなくなってしまいました。
旅の疲れもあって、余計につらくなり、うっかり涙をこぼしてしまったのです。
すると、スーツをびしっと着こなした男性が私の前に現れ、一曲誘ってくれたのです。
ペアダンスのことを何も知らない私を上手にリードして、上手く踊れた気分になれるような、夢のような一曲でした。
踊り終わると、感動してネガティブな気持ちはどこかへ吹き飛んでいきました。
実は、私の異変を察した同行者が話を聞いてくれて、そのマナーの悪い男性のことをまわりに聞いてくれたのです。
すると、その男性にダンスを指導しているという人がそのパーティーにいて、その人が一緒に踊ってくれたスーツの彼だったようです。
教え子のフォローをしたいという気持ちと、こんなことでダンスを嫌いになってほしくないという思いから、一緒に踊ってくれたのだと思います。
彼のおかげで私はペアダンスを嫌いにならずに、とてもいい思い出になりました。
リオの男性が素敵!という話ではなく、どこの国(や文化)でも失礼もいれば素敵な人もいます。
今回は私が踊った男性側のマナーの問題ですが、女性側も最後まで楽しく踊りきるというマナーがある、ということを一緒にいった友人から聞きました。
男性のマナーが良いからといって、女性が横柄になっていいというわけではなく、もちろん逆もしかりで、互いに思いやり、尊重しあうことがペアダンスの良いところなのだと実感しました。
もちろんペアダンスだけの話ではなく、普段のコミュニケーションでも同様ですね。
日本ではペアダンスの文化が日常的でないから気づいていないだけで、誰かと何かを一緒にするというときに、自己都合や自己満足だけで行動すると相手を悲しませることになります。
日本でペアダンスが盛んにならないのは、踊れないからというだけでなく、私たちがパートナーに対する思いやりを忘れているから、かもしれません。
と、30時間かけてブラジルに行って号泣してまで、いつものオチに持っていってしまうのでした。
GIRL'S CHプロデューサー。2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL'S CHの立ち上げに携わる。
以来現在まで、GIRL'S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。