格闘家 ベン・ブッカン「自分としては今がピークの真っ最中だと思う」
掘りの深い顔立ち、明るいブラウンヘアにブルーアイ。ほほ笑みをたたえながら、片言の日本語で一生懸命に話すさまは、ザ・ジェントルマン。そんなグッドルッキングガイが日本に来た理由とは。
「日本に来てもう10年経ちます。最初に住んだのは岡山で、その後のほとんどを千葉県の津田沼で過ごし、現在は東京に住んでいます。イギリスの大学を卒業後、何をしようか、何がしたいのかというアイデアがなく悩んでいた時に、英会話のNOVAのウェブサイトを見て、日本に行くことを決意しました。そこからずっと日本で英語の教師をしています。仕事では日本語を使用してはいけないので、10年もいるけど日本語はあまり上手ではありません。言っている事は大体分かりますが、話すのはちょっと苦手かな(笑)」
格闘技に出会ったのは来日後。
「子どものころに格闘技の映画とかを見て興味はありました。特に日本の武道などにはずっと興味を持っていましたが、イギリスでやろうとは思っていなかった。日本に来て、NOVAで働きだしたのですが、プライベートでもNOVAの先生たちと遊びに行ったり、行動したりすることが多く、ちょっと違う世界の人とも関わりたいと思ったんです。それで、当時住んでいた津田沼の家の近くにあった、総合格闘技津田沼道場に見学に行きました。最初は空手道場だと思って行ったんですが、総合格闘技の道場だった(笑)。でも見学しているうちに、総合格闘技のほうが面白そうだと思って、入門することにしました。でも今考えても、どこが楽しそうだと思ったのか分からない(笑)。自分自身は、UKロックが大好きで、小説を読む事、プラモデルを作る事が好きな人間で、格闘技をやる性格だとは思っていなかったから。これはあまり言わないほうがいいかも知れないけど、僕は打撃も弱いし、レスリングも弱い。グラップリングもあまり上手じゃない。でも今まで続けてこられたのは、日本で淋しい時間があっても、道場に行くといつも仲間がいたから。そこで会社の同僚とはまた違う、家族のような関係を築くことができました。それが今僕が日本にいる理由にもなっているので、格闘技をやめていたらイギリスに帰っていたかもしれません」
5月12日にはZSTの大会に出場。判定で負けてしまったものの、納得のいく試合ができた。
「この前の試合は本当に楽しかった。今までで一番楽しかったかもしれないです。会場の新宿FACEも前から大好きで、とても懐かしい雰囲気の中、試合ができました。5年前にプロライセンスを取った時やパンクラスの時に、そこで試合をしていたから久しぶりに新宿FACEで試合ができて、とてもうれしかった。今回は1年6カ月ぶりの試合でしたが、試合までにタイで3カ月、イギリスで2カ月、そして日本でもそれ以上に、毎日毎日一生懸命練習をしていたので、強くなった自分を多くの人に見せられて、本当に良かったです」
格闘家として達成したい夢。
「その時々によって、いつも変わります。2カ月前にZSTの試合に出るまではZSTのチャンピオンと言っていたんですけど、負けてしまったので、今はZSTの試合で勝ちたいと思っています。僕は遠い夢より、身近な目標の達成を積み重ねていくタイプ。格闘技を始めたばかりの時は、スパーリングができるようになりたかったし、その後はプロになれるぐらいの選手になりたいと思っていた。プロになったら、試合に出たいと思ったし、試合に出られるようになったら、勝ちたいと。そうしてコツコツと1個ずつクリアしていった先にチャンピオンがあればいい。それよりまずは、先日負けたマックス・ザ・ボディとリマッチしたいです。負けはしましたが、非常に惜しかったので、まずはそれが目標です」
格闘技の魅力は?
「10分とか15分とか、お互いのすべてをぶつけてファイティングしたあと、お互いをたたえ握手やハグをするところ。試合後のリスペクトが一番素晴らしいと思います。また、お客さんの声援は、本当に戦う力になりますし、負けても声援をもらえるとすごくうれしい。格闘技は素晴らしいスポーツだと僕は思います。今年35歳なので、格闘技人生はもうそろそろなのかな…と思うこともありますが、自分としては今がピークの真っ最中だと思うので、もう少し頑張りたいと思っています」
女王陛下のMMA ベン・ブッカン
イギリス・ヨークシャー州出身。1983年9月20日生まれ。10年前に来日し、日本で総合格闘技を始める。パンクラスなどを主戦場として活躍してきたが、今年5月12日に新宿FACEで行われた「ZST.60」に出場し、マックス・ザ・ボディ(カメルーン)と対戦。惜しくも判定負けを喫したものの客席を沸かせるパフォーマンスで話題に。T.GRIP.TOKYO/総合格闘技津田沼道場所属。