告発側会見で山根会長の音声公開「接戦した場合、やっぱり奈良やな」
「日本ボクシングを再興する会」が緊急会見開催
日本ボクシング連盟について助成金流用や不正判定など12項目にわたる告発をした「日本ボクシングを再興する会」が8月8日、東京都内で会見を開いた。
会見には鶴木良夫代表(新潟県ボクシング連盟理事長)、仁多見史隆氏(新潟県ボクシング連盟副理事長、アトランタ五輪代表)、菊池浩吉氏(宮崎県ボクシング連盟副会長)に、同会の代理人を務める弁護士の戸田裕典、岩井翼の2氏が出席した。
会見では冒頭、鶴木氏が「本年4月、日本アマチュアボクシング界を変えたいという強い思いのもと『日本ボクシングを再興する会』を立ち上げ、これまで日本ボクシング連盟のガバナンスを適正化するための自浄活動を行ってきたが、連盟に改善の兆しが見られなかったため、JOCなど関係機関に告発状を提出することになった。しかし連盟は告発後もその指摘を否定してきた。それで本日緊急の記者会見を開くことになった」と会見を開くことになった経緯を説明した。
続いて菊池氏が「報道されている諸問題は長年、数多くの指導者や選手が悩み、苦しんでいたこと。しかし、自分に不利益が及ぶことを恐れ、山根会長をはじめ連盟の幹部に声を上げることはできなかった。その結果あらゆることが不透明な組織になってしまった。さらにアマチュアボクシングは国体で隔年開催の競技に格下げになり、全国選抜大会では高体連との共催を否定し開催が危ぶまれている。インターハイでも協賛が危ぶまれ、多大な運営費の負担のため、2020年は大会の開催県が決まらないまま現在に至っている。活動の場が減り続ければ、競技人口の減少、競技団体の衰退につながる大きな問題。このような事態は、日本連盟に反対意見を述べれば、除名などの厳しい処分を受けるという恐れから何も行動を起こせなかった私たちの責任でもある。現在のまま東京オリンピックを迎えても将来アマチュアボクシングを存続させることは難しいと考え、強い危機感からこの会を立ち上げた。日本連盟の状況が公になるとアマチュアボクシングそのものが深く傷つくのではと懸念し、発足当初はすべてを水面下で活動を続けてきた。山根会長ら連盟幹部と面会し、改善の提案をしたが受け入れてはもらえなかった。日本連盟が直接的な監督官庁が存在しない一般社団法人であるため、関係者による自浄活動で改革を起こすしかないという結論に至った。そのため今年6月、山根明終身会長の退会要求書を提出することになり、各都道府県連盟に呼びかけてきた。これに対して、日本連盟は“厳しい責任が伴う”という文書を発表。この文書によって退会要求書の提出を躊躇する都道府県連盟が数多く存在し、自浄活動の限界を感じた。それで日本連盟のガバナンスを一から再構築するため、今回の告発に至った」とその経緯を語った。
告発以降に日本連盟が「助成金の不正流用」「コーチ謝金」「審判不正」の問題について反論しているのだが、それに対する見解も示した。
審判不正については「奈良判定」という言葉が出回ったことに奈良の選手と関係者に謝罪。そのうえで審判不正にかかわる証拠として内海祥子理事と事務局の女性による2016年4月30日の会話、2016年2月5日の山根会長の音声を公開した。
前者には会長の意向に沿った判定をしてもらうために審判員が集められているという趣旨の内海理事の発言が入っており、後者では山根会長の「接戦した場合、やっぱり奈良やな。それ反対つけた場合は“お前なめてるんか?”ってなってくるわけ」という発言が入っていた。
「金銭不正」と「国際審判員資格」という新たな疑惑を指摘
そして新たな疑惑として、チーム経費、オリンピック慰労金といった「金銭不正」と「国際審判員資格」という2つの問題を指摘した。
海外遠征などで支給されるチーム経費については、清算の跡が見えないといった不透明なものが多数あり「今後の調査で、本来日本連盟に戻すべきお金をそのまま懐に入れていたということがあれば、刑事責任を問われる可能性もある」(戸田氏)という。オリンピック慰労金については、選手団となった理事に支給されていることが確認されているものの、どのような根拠で支給され、金額が決まっているかも不透明で、なおかつ活躍した選手に対する慰労金は確認されていないという。
また規定で報酬が支払われないはずの理事に、通信費、交通費といった名目で一定額が支払われているということも明かされた。
「国際審判員資格」については国際ボクシング協会(AIBA)の規定では、「各国の理事は国際審判員の資格の欠格事由にあたる」はずなのに、理事の数名に国際審判員が含まれているのではないかという疑惑があるという。
この会見の前に大阪で山根明会長が一方的に声明を発表する形で「辞任します」と宣言しているのだが、日本ボクシングを再興する会としては「会長職からの辞任なのか理事の辞任なのか。日本連盟の会員としては残るという意向なのかがはっきり分かっていない」として、今後のアクションについては「JOCや第三者委に協力はしていく。山根会長や理事の辞任の情報を確認したうえで、会としては構成員の中で協議をして今後の対応は決めていきたい」などと話した。
また山根氏の辞任については菊池氏は「私たちが挙げた項目についての説明が全くないまま、一方的にそれ(辞任)を伝えて終わったという形に、これは逃げたという印象があった」とばっさり。山根氏の声明の中に「将来、東京オリンピックに参加できなくても、その次のオリンピックもあります。頑張ってください」という発言があったのだが、「聞きようによっては“東京オリンピックはダメだろうね”と聞こえた。それに至ったのは、日本連盟と山根会長が今まで行ってきたことによって発生したこと。責任を感じていただきたいということを憤りとともに感じた」と話した。後の質疑の時には「高校生の不安をあおるような発言に関しては怒りを覚えた。あれだけ不十分な説明をするならば、質問を受ける形で会見を開いてほしかった」と付け加えた
日本ボクシングを再興する会としては「現体制を入れ替え、新しい民主的な組織、透明性、公平性のある組織を作る」というのが目的なのだが、果たしてその実現にはどれくらいの時間がかかるのだろうか。