東京で野生のイルカと泳ぐ! 自然の宝庫・御蔵島でドルフィンスイム
東京都は狭いようで広い。日本の最南端、小笠原諸島の沖ノ鳥島があるのは東京都だ。東京から出発できる沖の島々には、都心とは比べようがないほどの自然が広がっている。そのなかに野生のイルカと泳ぐことができる海があるのをご存知だろうか。伊豆諸島の島々の一つである御蔵島は、日本でも数少ない野生のイルカが生息している。ここでは一般の人でも野生のイルカと一緒にダイビングできるのだ。いざ、御蔵島へ出発!
竹芝桟橋から東海汽船の定期船で島へ向かう。船は大きな客船でもっとも安い2等の和室なら8000円から利用することができる。大部屋宿泊ではあるものの、毛布の貸し出しもあり、波の揺れで心地よく眠れる。
夜22時発の便に乗れば、翌朝の早朝には伊豆諸島に到着する。定期船は、三宅島、御蔵島と順に周って行く。イルカと泳ぐドルフィンスイムができるダイビングショップがあるのは御蔵島か三宅島なので、そのどちらかに宿泊する旅行者が多い。今回は三宅島に宿泊した。
三宅島に到着するのは朝の5時。宿泊先で軽く朝食を取り、講習を受ける。野生のイルカたちはダイビングセットを背負った人間を怖がるので、ボンベなしでのダイビングがイルカと泳ぐ時のスタンダードだ。ウェットスーツにフィン、ダイビングマスクをつけて、海岸沿いで呼吸の仕方や潜水の方法、耳抜きの仕方などを実践練習する。
ウェットスーツとフィンでの水泳は、慣れるまでバランスを取るのが難しい。しかし、経験者も多いので、インストラクターも客側も、潜り慣れている人が初心者を率先して教える雰囲気なので、初心者でも安心して講習を受けられる。
1時間ほど練習したら朝食を取り、いよいよドルフィンスイムへ出発。小さな漁船に乗り込み、約40分ほどかけて御蔵島へ向かう。小さな船は想像以上に揺れるので、酔い止めは欠かせない。
御蔵島付近にはいくつかのグループのイルカたちが生息しており、どうやらそれぞれ懐いている船があるらしい。今回御蔵島まで連れてきてくれた「おしどり号」の船長の菊池氏が、船の上からイルカたちを誘導する。
「後ろにいるぞ!潜れ!」
船長の合図と共に、参加者たちが次々と海に入っていく。
御蔵島の海は青く澄んでおり、イルカ以外の魚たちもたくさん泳いでいる。船長の指示を聞きながら、イルカのいる方に必死にフィンをキックする。すると、目の前にーーイルカたちがいた!
驚くほど近い距離でイルカたちと泳ぐことができる。手を伸ばせば触れそうなほどだ。
船に懐いているイルカたちは、人に対して好意を持っており、ダイバーたちの周りをクルクルと回ったり、追い抜かしては戻ってきてを繰り返してくれる。
水族館でもガラス越しに近い距離でイルカを見ることができるが…初めてイルカと泳ぐダイバーは、生まれて初めてイルカたちの鳴き声を生で聞くことになる。海の中で一緒に泳ぐイルカは、私たちに「キューキュー」と鳴き声を上げ、何かを語りかけてくれる。その鳴き声は、音のしない海の中で聞くと、なんとも神秘的だ。
野生のイルカたちはきままなので、時には潜っても近くで泳ぐことが出来ないこともある。それでも何度も海へ潜り、船長の指示を聞き、イルカたちに会えた時の感動はひとしおだ。こうして何度かイルカとコミュケーションして、三宅島に戻った。
日本で野生のイルカと会うことができるのは、伊豆、小笠原諸島と、石川県の能登半島だけ。伊豆の海は温かく、10月末までドルフィンスイムを楽しむことができる。秋の連休にぜひ行ってみてはいかがだろうか。
取材と文、写真・ミクニシオリ
動画撮影・増沢 颯(動画上)、稲取マリンスポーツセンター 北奥慎也(動画下)