宮川選手の告発で女子体操界の パワハラ&引き抜き問題が表面化

2017年に行われた女子日本代表の公開練習での一コマ。速見コーチ(左)と宮川選手(写真:アフロ)

 日本体操協会が選手への暴力行為があったとして速見佑斗コーチを無期限登録抹消処分などとした問題で、被害者とされた宮川紗江選手が8月29日、東京都内で会見した。

 宮川選手は「1年以上前まで叩かれたり、髪を引っ張られたりした」などと暴力があったことを認めたうえで「暴力は許されず、コーチも反省している」とし「処分が重すぎる。速見コーチと東京五輪で金メダルを目指したい」と処分の軽減を求めた。

 そして日本協会の塚原千恵子女子強化本部長、塚原光男副会長からパワハラを受けていたと主張した。その内容として、東京五輪強化プロジェクトに当初参加しなかったことで「五輪に出られなくなる」などと圧力をかけられたほか、コーチとの信頼関係について「宗教みたいだ」などと高圧的な態度で言われたことなどをあげた。

 また塚原夫妻が指導する「朝日生命体操クラブ」への引き抜きがあったことも明かした。

 日本協会は同日、会見を開き、速見氏の暴力について時系列で説明し「被害者が我慢できても暴力は許されない」と処分の正当性を主張した。

 千恵子氏は30日、「宮川選手の主張には嘘もある。高圧的な話し方はしていない」などと反論し、パワハラを否定。光男氏も「全部ウソ」などと発言した。

 日本協会は第三者委員会を立ち上げ調査することを決定。具志堅幸司副会長は「パワハラがあったのなら大きな問題」などと話した。

 塚原夫妻は31日には代理人を通じて「宮川選手を脅すための発言はしていない」などと反論。しかし2日になって一転「宮川紗江選手に直接謝罪させていただきたい」などとするコメントを発表。しかしその内容が宮川選手の会見後の混乱についての謝罪であって、根本のパワハラや引き抜き疑惑に関するものでなかったことや、光男氏がテレビで宮川選手側に「二重契約」の疑惑があることをほのめかしたことから、宮川選手側は4日、直接の謝罪は受けいれられないとした。

 一方、速見コーチは5日に会見を開き「これからはどういう小さな暴力であっても一切暴力行為を行わないことを誓う」と謝罪した。そして宮川選手が「東京五輪強化プロジェクト」に当初参加しなかったことで海外遠征から外れたことなどをあげ「(塚原氏には)怖くて意見を言えない部分がある。圧力は感じていた」などと語った。

 また速見コーチは塚原氏側から関係者を通じて朝日生命への勧誘があったことも明かした。