【東京五輪 1964年の風景を求めて ~神泉・千羽~】耳からも感じられた熱気  渋谷公会堂で見た金メダル第一号の瞬間

貞子さんはいつもオシャレな格好でもてなしてくれる
渋谷公会堂で、東京オリンピック第一号の金メダルを目撃

 健次さんと貞子さんは、実際に東京オリンピックを見ている64年の証人でもある。二人そろって観戦したのは、女子の体操と男子の水泳だった。

「スポーツはそんなに詳しくなかったけど、あの熱気はすごかったわ。見ることができて良かった」と貞子さんが微笑めば、バツが悪そうに「妻には申し訳ないけど、僕はたまたま一人のときに重量挙げの三宅義信選手が金メダルを勝ち取った瞬間を見た。東京オリンピック第一号の金メダル。場所は渋谷公会堂だった」と健次さんが続ける。

 三宅義信選手は、2012年ロンドンオリンピック重量挙げ女子48kg級で銀メダルを獲得した三宅宏実選手の叔父にあたる。歴史が地続きでつながっていることを教えてくれるエピソードだ。

「人気競技はチケットがすぐ売れてしまうからなかなか見れない。その点穴場の競技は、比較的見ることができやすかった。重量挙げなんて全然見たこともないし、会場の人たちもさほど関心が高いようには見えなかった。ところが、“どうやらこれを上げれば三宅が金メダルだ”という状況になった。上げる前の異様な雰囲気と上げた直後の爆発的な大歓声たるや……すさまじかった。自国で五輪を開催することって、こういうことなんだなって思ったなぁ」