山田五郎流ルーベンス展鑑賞のコツ「肉を食べて体を作ってから行け!」
鎌田菜月の「新選組の相馬主計さんが好き」に「隅っこ狙いのタイプだ(笑)」
評論家の山田五郎氏とSKE48の鎌田菜月が10月21日、現在、上野の国立西洋美術館で開催中の「ルーベンス展-バロックの誕生」を記念したトークショーを東京スカイツリータウンで開催した。
今回は山田氏が“先生”となって鎌田にルーベンスの魅力、バロックの歴史的背景などをレクチャーするという形式。
鎌田は愛知県出身で徳川美術館などにも足を運んだことがあるのだが「美術館は家族が好きで、父母に連れられて行く場所というイメージが強くて、ちゃんと深く考える場所にはなっていない」と言うと、山田氏は「深く考えなくていい。そんな難しい場所じゃない」と優しいアドバイス。あらかじめルーベンス展に足を運んだという鎌田が「教科書などで見かける絵が多かった。生で見るとこうも印象が変わるのかと衝撃を受けた。もともと好きな作品はあったが生で見て好きな作品が変わった」とその感想を話すと山田氏も「生で見ると色が全然違う。大きさもそうで、実寸で見るとまた違う」と続けた。
鎌田はSKE48のグループの中でも一番と言ってもいいほどの多趣味人で、最近では将棋や歴史に興味があるとのことで「新選組が好きで、中でも相馬主計さんという方が好き」というと山田氏に「隅っこ狙いのタイプだ(笑)。ビートルズでいうとリンゴ・スターが好きなタイプ(笑)」といじられる場面も…。
本格的にトークが始まると、まずは山田氏がバロックとルネサンスの歴史や違いを「バロック美術を理解するキーワードは“やりすぎ”。ルネサンスは安定していて、どちらかというと理論的だし、静を重視する。バロックは躍動感があるし、情緒的という特徴がある」などと解説。
ルーベンスの絵にはなぜ裸が多いのか…
そして「エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち」という絵を題材に「ルーベンスは昔のフランス料理。“多い・でかい・くどい・分からない”の四重苦。ワインを語る時に昔のフランス料理を知らないと語れないのと同じように、西洋絵画を語る時はルーベンスを知らないと語れない。それにキリスト教の聖書とギリシャ神話を知らないと何が描いてあるか分からない。日本人にとってはそういうハードルがある」などと話した。
鎌田も「ルーベンス自身がこういうテーマを選ぶにあたってはそれだけ教養が必要。それがまたすごい」とうなずいた。
ルーベンスの絵はとても裸が多いのだが、これについては「なぜ多いのか?」と山田氏が鎌田に質問すると「彼女たちが神話の世界の人だから…」とズバリ正解。山田氏は「当時は普通の人の裸を描いたら捕まるから、これは非実在ヌードという位置づけ。もちろん本当はエロ狙い。ギリシャ神話をうまいこと利用してエロを描いていた」と時代背景も含めて解説した。その裸についても「ふくよかな女性がいいという風潮はあったが、それにしてもルーベンスにはふくよかさをやたら頑張って書くという特徴がある。ここまで一生懸命書かなくてもいいのに、セルライトなんかもものすごく細かく書く。肌の描き方もすごくうまい。その抜群の技術をセルライトを描くことに費やしている(笑)。これはルーベンス自身がふくよかな女性をいいと思っていたとしか思えない」と独自の解釈を見せた。
「フランダースの犬」のラストシーンの意外な事実も明かされる
今回のルーベンス展では人気アニメ「フランダースの犬」の最終回で登場するアントワープ聖母大聖堂のルーベンスの祭壇画「キリスト昇架」「キリスト降架」「聖母被昇天」の3点がダイジェスト版で4K上演されている。
一般的には最後のシーンは「聖母被昇天」の絵の前と思っている人が多いのだが、実は「キリスト降架」の絵の前だったことが山田氏から明かされると鎌田もびっくり。山田氏は「この絵は本当に昔から日本人しか見に行かない。学生のころに見に行った時に係のおじさんが“どうして、日本人はこの絵を見に来るんだ?”というから“フランダースの犬という物語があって”と説明したんだけどベルギーの人は全然知らなかった。そもそもあれを描いたのはイギリス人だし、イギリスでも流行ってない。世界中で日本でしか流行ってない」などと話した。
そして今回の「ルーベンス展」について「この濃さを見てほしい。これを越えないとダメ。ルーベンスにインスパイアされて濃い女の人の裸を描いていたのがルノアール。そのルノアールの日本人の弟子が梅原龍三郎という人。その梅原が“こういうのに負けないようにするには肉を食わなきゃいかん”ということを盛んに言っていた。だからみなさんもしっかり肉を食べて体を作って見に行ってほしい。この濃さに負けるな! この濃さを乗り越えていかないと西洋には勝てない(笑)」と独自のアドバイスでトークショーを締めくくった。