【インタビュー】柄本佑×中野裕太 18世紀ポルトガルと21世紀日本。時を超えた“1人2役”に挑戦
出会ってすぐに意気投合した2人。
柄本「演技の上でも一緒に芝居をしていて素晴らしい役者さんだなと感じることは多々あって、ちょっとしたことでもそれをよく感じていました。例えば僕が人につかみかかっていこうとするのを裕太くんが止めるというシーンがあるんですが、その力の具合が本当に良い。力が拮抗する芝居にならないといけないので、けっこう難しいところなんです。あと、独特な儚さというか色気があって引きつけられる」
中野「ニコラス・ケイジって儚いかなあ」
柄本「それは初対面の印象だから」
中野「役者としての佑くんは、下駄の話に集約されていると思います。ポルトガルに下駄を履いて行くというパンク精神というか、自分の“幹”がしっかりしているところは一緒に芝居をしていても信頼できる。それぞれが寄りかからずに支え合うというというのが本当のチームワークだと思うんですけど、佑くんとはそういう間柄になることができたと思います。現地で初めて会って、撮影直前までろくに会話も無かったのに」
18世紀リスボン大震災後のポルトガルでは、抒情的な風景とともに、日本人召使の宗次(柄本佑)と四郎(中野裕太)、そして宗次と引かれあう雑役女中マリアナ(アナ・モレイラ)の物語が語られる。
柄本「僕が本作に出演したいと思った一番の理由はポルトガルです。もともとマノエル・ド・オリヴェイラ(ポルトガルの巨匠監督)の映画が好きで、新婚旅行もポルトガルに行くくらい好きだったので、もうポルトガルに行けるなら何でもやります、と。いつか家を買って住みたいと本気で思っているくらい、異常なほど肌に合ってしまって(笑)」
中野「僕も、最初からやらないという選択肢は無かったですね。自然と、これはやるだろうと当たり前のように思える作品ってあるんです。今回もそうでした。やることになったら思った以上に大変な部分もありましたけど(笑)」
柄本「現地での撮影スタッフは舩橋監督と撮影監督の古屋幸一さん以外、全員ポルトガル人で、彼らがけっこうマイペースだったり、そもそも時間がタイトで、リハや段取りを重ねてブラッシュアップしていくことができなかったんですよね」
中野「クオリティーを落としたくないという葛藤も抱えて、監督も大変だったろうと思います」
柄本「あれで古屋さんがポルトガル人カメラマンだったら、こうして完成していなかったかもしれない(笑)。映像も画力があるし。ポルトガルのシーンは、あの土地そのものが絵になることもあって普通にきれいだなと思っていたんだけど、日本での映像を見たらすごく雰囲気があって、海外のカメラマンが撮った日本、という感じ。あれはすごいと思った」