皇治「卜部功也に負けた時にK-1を大阪に持って帰るしかないと思った」【12・8 大阪K-1直前インタビュー】
新生K-1初の大阪大会「K-1 WORLD GP 2018 JAPAN ~K-1ライト級世界最強決定トーナメント~」(12月8日、大阪・エディオンアリーナ大阪 第1競技場)の開催まであとわずか。本紙ではここに出場する選手の中からさまざまな角度でピックアップした選手にインタビュー。
今回は大阪出身で、かねてから「K-1を大阪に持って帰る」と言い続け、それを現実のものとした皇治に話を聞いた。
「タケポンは自分の中で何かにとらわれているように俺には見える。それはかわいそう」
皇治は現在、大阪に「TEAM ONE」というジムを持つ一方で、練習の拠点は東京の「K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ」に置き、大阪と東京を行ったり来たりの生活を送っている。
「大阪の南堀江にジムを出したんで、試合がない時は週1回帰っていますが、試合の1カ月半前くらいからずっとこっちに居てますね。たまに向こうでイベントがあるときは帰りますけど、それ以外はこっち。こっちにも家があります」
この日はシルバーウルフで公開練習が行われた。練習前に「今日は何も喋りませんよ~」と集まった取材陣に向けニヤリと笑ったものの、その後の会見ではいつも通り、記事になりそうなフレーズを散りばめたトークを展開。取材陣を笑わせることも忘れない。確かに大阪大会開催についてはこの男の存在が大きかったことを思わせる。実際に大阪大会が発表された時の率直な気持ちって?
「素直にうれしかったですよ。俺が言っていたことが実現したんで」
実際のところいつごろから「大阪にK-1を持ち返りたい」と思っていた? 口に出す前からだと思うが。
「ずっと思っていましたね。K-1に初めて出た時。卜部功也に負けた時ですね。“ああ、このままじゃ終われへん”と思ったし、俺は苦労してやっとK-1に上がったんで、ちょっとでも大阪の子たちが早くK-1に上がれるようにしてあげたいし、それに大阪のお世話になった人たちにK-1を見せたいという思いが強かったんで、“やっぱ持って帰るしかない”ということはその時に強く思いましたね」
今回は一人で2000枚チケットを売った。そして「まだ買えてない人が3000人いる」とも言う。今回の武尊戦は完全なるホーム状態での戦いとなる。これは逆にプレッシャーにはならない?
「正直言って、めっちゃ目立ちたがり屋で、おっきいところで試合がしたくて生きてきたから、こんな言い方したら失礼かもしれないけど、当たり前って感じ。これまでは“なんで俺がこんなちっちゃいところでやらなあかんねん?”ぐらいに思ってやってきたんで(笑)。正直まだまだですよ。だって魔裟斗さんの時代に比べたらまだまだ小さいから。俺が見ているのはそこっすよ」
全然、プレッシャーはない。
「プレッシャーもくそも、なんもないですよ(笑)」
武尊との対戦をずっと口にし、実現させた。時には挑発し時には褒め殺す。武尊について率直にどう思っている。
「かわいそうだと思う。頑張ってやっているのは認めているし、一生懸命やってるんやろうなとは思うけど、頭が悪い。タケポンの今までやってきた実績に俺の頭があったらもうやばいっすよ。スーパーヒーローですよ(笑)。天は二物を与えずというか、もったいないと思う。それにすげえいろいろなことにとらわれているというか。大人の事情にとらわれているとかではなくて、自分の中で何かにとらわれているように俺には見える。それはかわいそうだなと思いますよ」
大人の事情じゃなく?
「大人の事情とか団体の壁とかではなくて、自分の中でのことだと思う。俺から見たら窮屈に見えるから、もっと自由にやればいいのにと思う。でも、それって人の性格やし。だから俺が代わったろ、って(笑)」
「KrushとかKHAOSを大阪でやっていけるようになればいい」
今回、大阪大会は武尊vs皇治戦が発表されたところで一気にチケットが伸び、大会約2カ月前の段階でチケットが完売。大阪の選手やファンにとっては、今後は大阪大会の定期開催、そしてもっと大きな会場での開催、または1年に複数回の開催といったところに期待が高まる。
「俺がおったら大きな会場でできるやろうけど、俺無しではできんと思うから、俺が居てるうちはでっかい舞台を目指していけばいいと思う。でも俺はK-1も大事だけど、そうじゃなくてもっと若手が出やすい舞台としてKrushとかKHAOSを大阪でやっていけるようになればいいと思っているから」
K-1だけじゃなく。
「うん。そういうところで目立ったらK-1には自ずと出られるし。正直な話、今回は俺がメーンを張るようなK-1をバンと持って帰った。じゃあ若手の子がそこを目指せるかといったら目指せるけど、すぐに出られるかといったら出られないじゃないですか。そうやったら、そこにつながる階段をしっかり作ったらないかんと思うんで、ホンマにKrushとかKHAOSを大阪でやれればいいと思うし、俺が何か、顔とかになれるんならなりたいと思っているし。そういう道も考えています」
実際に東京ではKrush、KHAOSで実績を上げた選手がK-1のリングに上がることは一つの流れになっている。
「そっちのほうがリアルですよね」
目標が立てやすい。
「そうですね。俺がK-1を持ち帰ってきて、華やかな舞台を見せて、“俺もこうなりたい”と思わせて、そしてその子たちが上がっていく階段、そこも具体的に作らんとやっぱり難しいと思うから」
大阪の格闘技界のプロデュース的なことにも取り組んでいきたいという感じ?
「そういうこともしていきたいですよね。格闘技があったから今の俺があるし、そういうところで恩返しもいいなって考えてます」
この日の公開練習後の会見では「あと何試合できるか分からない」とも口にしたが、そういうプロデューサー的な動きはあくまでも現役を終えてから?
「そうですね。今すぐとかは考えていないですけど」
では個人として、この大会をステップとした今後の目標は?
「いつも言っているように、俺はファンがおっての自分だと思っているんですよね。だからファンが喜ぶことをしたい。昔、“アリスター・オーフレイムとバダ・ハリってどっちが強いんやろう?”とか“ミルコ・クロコップとピーター・アーツのどっちが強いんやろか?”とか、ファンが抱く妄想というか、そういうものを叶えていけるようにしないと格闘技は盛り上がらないと思うんです。だからそういう団体の壁をなくしていったろうと俺は思っています」
「大阪のいいところは俺がおるところでしょ(笑)」
今回は東京をはじめ、大阪以外からのファンも駆けつけそう。大阪のいいところをアピールして。
「大阪のいいところは俺がおるところでしょ(笑)」
でも最近はずっと大阪にいるわけではないので。
「大阪の人はすげえあったかい。人があったかいからこそ町もあったかい。俺、でも最初は東京のこと嫌いやとか言ってたけど、最近ではやっぱみんな人間やなと思ってる。東京も来たら楽しいし、そのへんは変わらんけど。でもまあ、大阪のほうが喋りやすいですよ。みんな気軽に話しかけてくれるし、話してくれるし、ジョークも言うし。まあ、みんなおもろいですよ、大阪は」
人の温かさについては今大会に出場する篠原選手もあげています。
「ああ。まあ悠人自身はあんまおもろないですけどね(笑)。でもどの店行っても楽しいですよ、大阪は」
人があったかいから、その人がやっている店も当然あったかい。
「うん。まあ、東京って、地元で生まれた人より、いろいろなところから集まってきている人がいっぱいいるから、みんな警戒心も多少あるじゃないですか。大阪って結構、地元の人が多いし。だからかもしれないですね。アットホームな感じはすごくありますよ」
ではK-1を見るだけでなく、せっかくだから大阪の人と交流を持つ機会を作るというのがおすすめ?
「そうですよ。俺の話をしたらいい。皇治は世界共通語というか大阪共通語やから(笑)。もうみんなで俺の話をしたらええんですよ(笑)」
皇治はKrush参戦当初は会見などでのトラッシュトークで話題を振りまき、対戦相手のヒートを誘った。当時、それを良しとする人は少なく、アンチも多かったのだが、最近ではちょいちょい顔を出す「いい人」感のせいかK-1会場で行われている「1時間店長」では一番の売り上げを誇るなど、いつの間にかK-1の中心選手になった。
武尊と皇治。K-1や格闘技への思い、その根っこは多分同じなのだろうが、表現の仕方や方法論は水と油。実はこういう関係って会社や学校などを見回すと結構身近にもありそう。そう考えると当日の試合の行方はもちろんなのだが、その後の2人の言動も含めて味わい深いカードとなりそうだ。(本紙・本吉英人)