ネイサン・チェンが優勝! 宇野は惜しくも2位【グランプリファイナル  男子レビュー 】

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 フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル、男子の優勝はアメリカのネイサン・チェンだった。2位の宇野昌磨とは約7点の点差となり、ミスを最小限に留めたチェンがこの僅差の戦いを制した。

 チェンにとっては、ショートとフリー両方で4回転フリップを決められたのが大きかった。要素の基礎点によって出来栄え点に傾斜がかかる新ルールのもとでは、高難度ジャンプの成否が得点を大きく左右する。4回転ジャンプのうちでも基礎点が高いフリップで、チェンは約3~4点半ばの出来栄え点を獲得、このジャンプ1本で15点ほど稼いでいる。高難度ジャンパーの意地を見せた。

 宇野は惜しくも2位。フリー冒頭では単独の4回転がダウングレードになるなど、回転不足のまま降りてきて着氷が乱れたジャンプが複数あり足を引っ張った。ショートでは得意のステップにおいてまでレベルを取りこぼし、ここでの調子の悪さは本人も認めるところだ。

 それでも演技構成点はトップを譲らず、伸びやかなスケーティングや一音一音を忠実に捉えた演技で魅せた。エッジを深く使いながらもスピードに乗り、ジャンプ後のフリーレッグなど要素の終わりまで美しい。この実力をジャンプの成功とともに発揮することが目下の課題だ。

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 3位にはファイナル初出場のチャ・ジュンファンが入った。韓国の男子選手がファイナルに出場し、さらに表彰台に乗るのは史上初の快挙。ジュンファンは平昌五輪にも出場した期待のホープのひとりだが、今シーズンも着実に成長を見せている。

 動きのひとつひとつがしなやかで、柔らかくて中性的な演技が持ち味。技と技の間のステップやターンはまだまだ薄めだが、各要素を確実にまとめる力に秀でる。これからの飛躍に引き続き注目したい。

 4位はチェコのミハル・ブレジナ。自らの武器である安定感をしっかり活かした。さらに出来栄え点でも高い評価が並び、自己ベストを更新したフリーのステップシークエンスは出場選手中もっとも高得点。ポテンシャルの高さを見せた。

 羽生結弦の欠場に伴い、補欠から急遽繰り上がったキーガン・メッシングは5位。地元カナダでのファイナル出場となった。膝をしっかり使って踏み込んで跳ぶジャンプは、高さも幅も十分で迫力がある。フリーは3回転半で激しく転倒したが、素早く立ち上がり次の曲調へ身体を移していったのが印象に残った。個性的な振付も楽しい。

 ロシアのセルゲイ・ヴォロノフは6位。31歳は今回の出場者でも堂々の最年長だ。大きなジャンプが魅力だが、ファイナルではなかなか正確に降りられず、ジャンプの繰り返しミスもあって得点が伸びなかった。シーズン後半も、大ベテランの活躍に期待が高まる。

(文・尾崎茉莉子)