イギリス人コメディアンBJ Foxが振り返る2018年ニッポンのニュース〈スポーツ編〉
脱サラをし日本でコメディアンとして活躍するBJ Fox。2018年の日本の話題のなかでは、母国イギリスでも大盛り上がりのサッカーと、イギリスではあまり盛り上がらない冬季五輪が印象的だったとのこと。
「ワールドカップの日本の素晴らしい負け方が印象的でした! いや、これは本当に(笑)。僕としてはポーランド戦での時間稼ぎは素直に称えたいと思いました。普段の国内リーグなどではまた別だけど、ワールドカップという世界的な大会で1勝するためになりふり構わず、やれることをすべてやった。サムライブルーの思いがすごく伝わってきましたね。それにベルギー戦では最終的に負けたけど、気持ち的には勝っていたのが良かった。イングランドは準決勝まで行ったけど試合のプレッシャーに耐えられずに、悔しい負けだった。それに比べて日本の試合は負けるときも誇り高く散るサムライスピリッツそのものという感じだった。前回の大会から比べたら内容も素晴らしかったし、大会直前に監督交代とかいろんな不安要素もあったでしょう。たぶんほとんどの人が、日本がここまで健闘するなんて思っていなかったんじゃないかな。それはイングランドも同じでした。世界一の金持ちリーグがあるのにイングランドってなぜか国際大会だとすぐ負ける(笑)。だからみんな期待していなかったのに準決勝まで進んだものだからイングランドでもすごい盛り上がりでした」
ちなみにイギリス人が嫌うプレーとは?
「ダイブ。蹴られたフリをして転がるプレーは嫌われます。ネイマールがよくやるヤツですね(笑)。イギリス人が選手に求めるものは、あきらめずに立ち向かっていく気持ちなんです。騙しとか、ごまかしとか人をおちょくるとか…要するにネイマールがよくやってるようなことは嫌われます(笑)。だから多くのイギリス人が好きな日本人選手というと、やはり岡崎慎司選手。突出した才能があるわけでもなくカッコよくも無く、ただ頑張りだけでリーグの優勝メンバーとなった。彼のゴールって、足で蹴るというより体全体でボールをゴールに押し込むような感じで、全身全霊でゴールするみたいな熱さを感じるんです。あれは僕だけじゃなく多くのイギリス人が好きな姿。これまでで一番、好感度が高い日本人選手なんじゃないかな。あ、あと中村俊輔選手。スコットランドの選手に“子供のころにあこがれた選手は?”と聞くと中村俊輔の名前をあげる人はすごく多いです。ちなみに僕が一番好きなチームは稲本潤一選手もいたフラム。選手個人だと、一番好きなのはハリー・ケイン。彼も岡崎選手と近いタイプで、男性美容品のCMには出られないけど(笑)、ガッツがあってチーム愛が強い人です」
冬季オリンピック・パラリンピックも楽しんだという。
「イギリスって夏の大会に比べると冬季大会はそこまで盛り上がらないんです、自国の出場選手が少ないから(笑)。でも日本だと冬季大会もすごく盛り上がるじゃないですか。スキージャンプの高梨沙羅選手やフィギュアスケートの羽生結弦選手のようにトップクラスの若い選手も多い。彼らの姿や日本での盛り上がりを見ていて、僕の中で冬季大会に対する認識が変わっただけじゃなく東京2020がすごく楽しみになりました。以前は僕もオリンピックにほとんど関心が無かったのですが、2012年のロンドン大会のときにオリパラがコミュニティーに良い影響を与えることを実感してからは認識が変わりましたね。多くの人がボランティアに参加したことや、イギリスが一つになってソマリア移民のモハメド・ファラー選手を応援し、金メダルを取ったことなど、あのときはイギリスの良い面を実感することができた。とか言いつつイギリスは近いうちにEU離脱しますけどね(笑)」
今年は、日本で選手登録しているテニスの大坂なおみ選手の活躍も話題を呼んだ。
「海外では彼女のチャーミングなキャラクターや正々堂々と戦う姿、礼儀正しさに日本人らしさを感じた人も多かったし、日本でも多くの人が彼女の活躍を喜んで普通に応援していますよね。日本の国際化は今後も進むでしょうし、そうなれば複数のルーツを持つ人が日本の選手として活躍することも増えるでしょう。僕なども、アメリカ生まれイギリス育ち、母をアイルランド人に持つ日本の脱サラコメディアンですし(笑)。今アメリカなんて、もっと人種的なことにセンシティブな状況かもしれません。以前にサンフランシスコでライブをやったとき現地スタッフとのコミュニケーションミスで“東京から来た日本人コメディアン”って紹介されちゃって。それで出てきたのが189センチの白人ですからね。笑っていいのかどうか、会場がめっちゃ微妙な空気に包まれました。アメリカの笑いはイギリスに比べてあんなに分かりやすかったのに…(笑)」
以上、BJ Foxが振り返る〈スポーツ編〉。後日〈エンタメ編〉もWEBにアップ予定!
イギリス出身。人気ゲーム『グランド・セフト・オート』のアジア担当としてシンガポールに5年勤務後、日本へ転勤。その後、脱サラしコメディアンや俳優、MCなどとして活躍中。2017年に企画・脚本に携わり、主演したコメディードラマ「Home Sweet Tokyo」(共演・木村佳乃、渡辺哲)がNHK総合にて放映。「Home Sweet Tokyo シーズン2」放送中。https://www.nhk.or.jp/homesweettokyo/