【インタビュー】天龍源一郎が教える“腹いっぱいの人生”に必要なこと

 

「自分が自分の応援をできなかったら揺らいでしまう」

――環境を変える怖さみたいなものはなかったのでしょうか?

どんなふうに周りから見えるのかなという楽しみしかなかったよ。怖さを感じるのは、自分という存在がどこかブレているからじゃないかな? 「俺は俺なんだ!」って、自分に自信を持ってやらないと。自分が自分の応援をできなかったら揺らいでしまうよね。あと、やっぱり「こんちくしょう」という負けたくないって気持ちはあってほしい。でも、単に怒りだけをたぎらせていても良くない。娘(天龍プロジェクト・嶋田紋奈代表)に言わせると、反骨心をエネルギーにしているときの俺は、いつも自分を客観的に見ている俺がいるって言うんだよ。

――とても気になります(笑)。

プロレスラー・天龍源一郎に対して、頭上から人間・嶋田源一郎が、怒りの根本は何か? 今するべきことは何か? という具合に、自分を客観視している……と言っても、俺はそんなに意識していないんだけど、家族からはそう見えたみたいでね。言われてみれば、どうして俺はくやしいと思っているんだって考えていた俺がいる。一方的に怒りに身を任せるのではなく、こんちくしょうと思うときに、「なぜ自分はこれだけ腹が立つんだ?」といった客観的な目がないと、エネルギーに変えられないと思いますよ。

――プロレスを廃業されて約3年が経過しました。今の日常には慣れましたか?

気楽なもんですよ。現役のときは、ちょっとでもサボろうものなら自分に対しての後ろめたさを感じていましたけど、今は何もやらなくていいからね。 それどころか、“何もやらなくていい”ということが、こんなにも至福の時間だということに感謝してます。例えば、雨の日に傘をさして職場に向かっているビジネスマンを見ると、「今から働きに行くんだ。ご苦労様です」と思うし、喫茶店に入って打ち合わせをしている人たちを見ると、「俺はのんびりとコーヒーを飲むことができるんだな」と贅沢な瞬間を噛みしめています。おかげさまで、俺を呼んでくれるバラエティ番組などもある。この歳になって、また新しいことに挑戦させてもらっているのは、本当にありがたいですね。

――バラエティをはじめ、天龍さんが元気な姿で活躍されていることがプロレスファンとしてただただうれしいです。かつて手に汗を握って見ていたレスラーの中には、もういない人も少なくないので……。

俺なんか、ここまで生きたらしめたもの。ただ、愚痴をこぼせるやつがどんどんいなくなって寂しいけどね。馬場さんの悪口を言える相手が、(グレート)小鹿さんと(ザ・グレート)カブキさんくらいしかない(笑)

――(笑)。天龍さんの引退までの軌跡を描いたドキュメンタリー映画『 LIVE FOR TODAY』の中で、廃業後は家族とともに過ごす時間を大切にしたいと仰っていました。